研究課題/領域番号 |
24520922
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 清泉女子大学 |
研究代表者 |
辰巳 頼子 清泉女子大学, 文学部, 講師 (20407381)
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研究分担者 |
福武 慎太郎 上智大学, 外国語学部, 准教授 (80439330)
浜本 篤史 名古屋市立大学, 人文社会系研究科, 准教授 (80457928)
原口 弥生 茨城大学, 人文学部, 准教授 (20375356)
高木 竜輔 いわき明星大学, 人文学部, 准教授 (30512157)
布施 雅彦 福島工業高等専門学校, その他部局等, 准教授 (80280345)
豊川 智之 東京大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (40345046)
鈴木 直喜 清泉女子大学, 文学部, 教授 (10338577)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 移動 / 文化人類学 / 災害研究 |
研究概要 |
本研究の目的は、東日本大震災による福島第一原子力発電所事故をうけて、福島県から首都圏、名古屋市、茨城県に避難している母子避難者を対象に聞き取りを行い、避難経路や親族との連携、および支援者や行政のサポートなどを調査すること、そして母子避難者が、避難者同士、故郷の親族・友人、避難先の支援者や一般住民、行政担当者などとつくりつつある、放射線被害への恐れを通した人々のつながり=アソシエーションの実態を明らかにすることである。 平成24年度は、研究グループ全体としては二回の研究会を開催した。第一回の研究会は5月に行い、研究の方向性を議論し、今後のスケジュールについて確認した。本研究グループは主に人類学者と社会学者からなっているが、第一回目の研究会では人類学と社会学における国内避難民についての問題設定の相違や、アソシエーションという概念を用いることの是非などが議論にのぼった。これらの相違点を念頭に置きながら研究を進めることによって、移民研究、難民研究、開発と非自発的移住研究、災害研究などに分断されていた領域の知見を、移動する人びとのアソシエーションをめぐる研究として統合していく可能性を見出すことができた。12月にはいわき市において、研究打ち合わせとともにいわき市における原発事故からの避難状況についての調査、聞き取りを行った。本研究は基本的には福島県外に避難している人びとを対象にするものではあるが、いわき市という原子力発電所周辺から避難している人びとの避難先でもあり、なおかつ県外へ避難者を出している場所でもあるところで聞き取りをすることができたことで、原発問題の重層性を認識するとともに、自治体の個別の政策が避難者の行動にきわめて大きく規定していることを改めて確認することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究代表者の産前・産後休業により、平成25年2月から7月までは研究期間を中断した。そのため、研究期間を平成27年度まで延長する。研究成果の発表も延期されてしまうことのないように、研究成果を二段階(おもに教育的な成果、おもに学術的成果)で発表することにし、教育的成果の発表と同時並行的にグループ内で議論を進めて学術的成果を出していく方針をとることとする。
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今後の研究の推進方策 |
原発避難という問題は現在進行形であり、時間の経過のみならず政治の情勢などによって避難者の状況は変化する。そのため、時間を区切って現状を正確に把握することは重要である。本研究は、当初は、旧赤坂プリンスホテル避難所(2011年5月末で閉所)の避難者についての報告書を早い段階で作成し公表することをスケジュールの一環に組み込んでいたが、その後の追加調査が必要であると判断しこれを延期した。避難命令を受けずに「自主的に」避難した人びとが多かった旧赤坂プリンスホテルの避難者が、その後どのような行動をとっていったのか、追跡してその現状を把握することに今後も努めていく。 調査による把握のみならず、広く社会に発信することを目的に、研究機関内においても研究成果を少しずつ公表していくことも同時に重要であると考える。そのため聞き取りによって得られたデータで同意が得られるものに関しては、問題を周知するために、聞き取り集として公表することを今後は検討していく。 25年度の研究再開後は、出来るだけ早い段階で、研究グループのアウトプットに関して議論をまとめ、それにむけて各々が調査研究を進める。現在のところ、原発避難問題の学生への周知や教育に重点を置いた論文集と、より学術的アプローチを用いた論文集の二つのアウトプットを想定している。研究中断により、研究期間は27年度まで延長される見込みではあるが、前者の教育に重点を置いたアウトプットに関しては、研究終了以前に出版することができるようにスケジュールを組んでいく。
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次年度の研究費の使用計画 |
24年度2月より引き続き25年度7月末までは研究代表者の産後休業により研究を中断する。8月の再開後は、初年度同様に母子避難者のアソシエーションに関する継続的な聞き取り調査をメンバーそれぞれが行う。その後10月に研究会を行い、研究成果のアウトプットに関して原稿の要旨を持ち寄って議論する。3月まで調査及び資料の収集を各自行い、25年度末である3月末に初稿を提出する。 このアウトプットは主に大学3・4年生から一般向けで、中心テーマは避難論と支援論、すなわち東日本大震災以降の避難の現実と支援の現実および今後の支援の方向性について、考えるものとする。学術論文に関しては、この学生一般向け教育書の内容をより発展させたものを想定しており、研究期間の残りの1年半余りを用いて議論のうえ完成させることとする。
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