研究課題/領域番号 |
24530036
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研究機関 | 麻布大学 |
研究代表者 |
村山 史世 麻布大学, その他部局等, 講師 (60318889)
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キーワード | 公私二元論 / コミュニティ / ESD / まちづくり / 私事化 / 自律した個人像 / 実践コミュニティ / 共同管理 |
研究概要 |
本研究においては憲法理論の前提となってる公私二元論を再検討し、我が国の社会実態に即した「公ー共ー私」の枠組みで帰納法的に再構成することを目的にしている。このような問題意識は日本国憲法・行政法を専門とする公法研究者において共有されているとは言い難い。他方で政治学や社会学、まちづくり、コミュニティ政策、環境教育、林政史、教育学などでは、「公=国家」と「私=個人」には還元できない「共=コミュニティ」の重要性を指摘している研究が多数存在している。公法学と他の研究領域の問題意識の断絶の架け橋に本研究はなってゆきたい。 日本共生科学会では、「公私二元論と共の領域‐憲法学およびまちづくり論を題材に」のテーマで口頭発表を行った。本発表での質疑をもとに、現在論文を準備中である。 公私二元論は、教育学、特に環境教育・ESD(持続可能な開発のための教育)を題材に検討も行った。教育学においては、「国家に有用な個人の能力」が学力とされてきたのが学力論の言説であるとの有力な指摘もあるが、この学力観も「公私二元論」に立脚しているといえよう。ESDが育みたい能力・態度は、「公私二元論」では捉えられない、「共=コミュニティ」に参画し、コミュニティを維持・発展させてゆく能力・態度を涵養している。すなわち、ESDはコミュニティの存在を前提とし、「コミュニティに参画する能力・態度」も重視している点で、従来の学力観とは異なっている。このような問題意識で「ESDの実践と地域社会の変容-環境教育における実践コミュニティの意義」を執筆した。本稿は日本環境教育学会編『環境教育とESD』で2014年に収録予定である。 このように憲法学の公私二元論の再検討は、憲法学自体の検討と、ESDはじめ他の研究領域での公私二元論の批判的検討と同時進行で行ってきた。2014年度もこのような方法で、研究を完成させてゆきたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
文献調査調査は進行したが、まだ十分とはいえないが、仮説の再構築はある程度進行した。憲法学の自律した個人像は、「コミュニティに根ざした公共心ある個人」というよりも、「ばらばらに個別化した個人」、いわば「私事化された個人」を導いた。他方で、「資源・エネルギー・労働の共同管理」を存在意義としていたコミュニティは、産業や経済、労働の変化によって、共同管理する必要がなくなってゆく。このような戦後の「個人の私事化の進行」と「コミュニティの共同管理の衰退」が、公私二元論とも符合していた。 公法学だけでなく、他領域との研究とのリンクさせてゆく作業で、研究成果の公法が遅れているのが現状である。
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今後の研究の推進方策 |
研究の遅れを取り戻し、研究成果をあげたい。そのために、今年度は公法研究者及び他分野での研究者とも積極的に研究会を実施してゆき、研究のまとめを行ってゆきたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
基礎的な文献調査に時間を費やして、研究者との意見交換やフィールドワークが十分進まなかった。 最終年度なので、文献調査、研究者や専門家との面談や研究会の開催、フィールドワーク、研究成果の公表等に尽力したい。
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