(1)邦語文献資料およびドイツ・アメリカ・イギリスを中心とする外国文献資料を収集し,その分析を行った。イギリスとドイツについては,現地で,研究者と面談し,研究課題に関する情報収集も行った。 (2)先行研究の分析・検討等を行った結果,研究課題に係る問題は,とりわけ実務においてかなり意識されてきているものの,理論面においては,いまだ十分な議論がなされているとはいえない状況にあることがわかった。多数当事者仲裁を巡る手続法上の問題としては,①仲裁人の選任,②並行する手続の処理(併合),③係属する手続への第三者の参加があるが,議論の前提として,裁判所と仲裁裁判所の関係をどう捉えるか,換言すれば,仲裁手続を国家の紛争解決システム内に位置づけた上で,どの程度国家裁判所が仲裁手続を援助・監督しうるかが問題になる(たとえば,国家裁判所が並行する仲裁手続の併合を命じることができるか等の局面)。その関連においては,国際仲裁と国内仲裁を同様に規律しうるかどうかも問題となる。 (3)外国文献資料およびインターネット上の情報分析により,多数当事者仲裁の規律に関する各国の事情,および各仲裁機関の規則等の情報を入手し,その内容を整理した。国家裁判所と仲裁裁判所の関係に対する各国の態度は様々であり,また規律も様々であるが,一定の方向性をみることができた。 (4)アメリカについては,クラス・アクションに対応してクラス・アービトレーション(集団仲裁)という特殊な仲裁形式について,興味深い判例の展開があり,これに関する議論も多い。 (5)(1)~(4)の分析結果に基づき,現在は,とくに手続の併合に焦点を当てた論文を執筆中である。
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