経済には様々な遅延が存在するが、その数理的な処理の難しさから経済分析に明示的に時間遅延が現れることはあまりなかった。本研究は三つの基本的な経済モデル(不完全競争モデル, 新古典派経済成長モデル、IS-LMモデル)を取り上げ、時間遅延が動学に及ぼず影響を解析的および数値的に考察した。(1) 教科書的な簡単な枠組みであっても時間遅延は不安定効果を持ち、循環的変動を生み出す。(2)複数の時間遅延が共存する場合にはその相対的に大きさに応じて不安定化させたり安定化させたりする効果が出てくる。(3)複数の遅延をもつ経済モデルではHopf分岐により不安定した解は周期からカオスを含む複雑な変動へと変化する。
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