研究課題/領域番号 |
24530332
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
研究機関 | 桃山学院大学 |
研究代表者 |
矢根 真二 桃山学院大学, 経済学部, 教授 (90174557)
|
研究分担者 |
岡村 誠 広島大学, 社会(科)学研究科, 教授 (30177084)
野田 知彦 大阪府立大学, 経済学部, 教授 (30258321)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | 水道事業 / 効率性 / 確率的フロンティア分析 / 包絡分析 / 老朽化 |
研究概要 |
本研究の基盤となるデータベースの構築は,おおむね当初の研究計画どおりに順調に進んでいる。特に『地方公営企業年鑑』からのデータ加工は,アンバランスドおよびバランスドの双方のパネルデータをほぼ完成することができた。『水道統計』データも,水質データを除けば,クロスセクションでの利用は可能になりつつある。 こうしたデータ整備の進展もあって,実際に効率性フロンティア分析(EFA)を実施できるようになった。とりわけ,確率的フロンティア分析(SFA)においては,多様なデータを活用することにより,これまでの日本の水道分析ではほとんど考慮されて来なかったeteroskedasticityを明示的に導入した実証分析を行うことができるようになった。2013年のApplied Economics誌(45, 2337-48)に掲載された論文"Sensitivity Analysis of Efficiency Rankings to Distributional Assumptions: Applications to Japanese Water Utilities."(by Yane and Berg)は,その成果の1つである。 こうした分析手法の共有化を包絡分析法(DEA)においても進めるために,購入したDEA関連のソフトウェアをインストールしたノートPCを用いて様々なデータの解析情報を相互に交換できるようになったため,これまで日本での水道分析では使われていないOrder-m Frontiersの使用の目途も立ちつつある。 こうしたEFAによる実証分析は,各水道事業体がおかれている特有の環境をも配慮しているという意味で,それを無視してきた従来のベンチマーキングに比べて,はるかに現実妥当性および政策的重要性の高い含意を有する。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
『地方公営企業年鑑』からのデータ加工がアンバランスドおよびバランスドの双方のパネルデータの形でほぼ完成できたこと,英文のレフリー雑誌に2本の論文を掲載できた点は評価できると考える。 他方,『水道統計』の水質データが浄水場別に細分化されているので,人力だけでは非効率なため,プログラミングを併用するなど加工法の修正を余儀なくされるという課題に直面している。 ゆえに,研究成果の一部は予想より早く良好な結果を得られたが,水質データの整備だけは予想以上に時間を要するという意味で,全体としては順調だが,すべて計画通りであるとはいえないのが現状である。
|
今後の研究の推進方策 |
引き続き,環境要因を明示的に考慮した確率的フロンティア分析および包絡分析を実施する。人口密度や水源の相違を無視して事業体や経営者の効率性ランキングを測る従来のベンチマーキングでは,ミスリーディングな政策提言になりかねないからである。 同時に,『水道統計』の老朽化や水質データを利用可能にする作業を継続する。双方のデータを同時に考慮した効率的フロンティア分析は未だ計測されたことがないうえ,いずれの要素も今日の水道事業を考えるうえで極めて重要だからである。
|
次年度の研究費の使用計画 |
初年度はデータ整備と効率性フロンティア分析に焦点を当てたため,地域独占企業としての公益事業の価格設定行動や組織内の労働の効率性の理論的実証的分析は今年度以降の集中的な課題である。ゆえに主として,これらの理論分析の展開のためには各地での報告,実証分析のためには賃金や料金に関わる計量分析に関わる経費に集中して使用する予定である4.
|