研究課題/領域番号 |
24530367
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研究機関 | 武蔵大学 |
研究代表者 |
大野 早苗 武蔵大学, 経済学部, 教授 (40307145)
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研究分担者 |
茶野 努 武蔵大学, 経済学部, 教授 (10532195)
東郷 賢 武蔵大学, 経済学部, 教授 (30308019)
林 康史 立正大学, 経済学部, 教授 (30409560)
神楽岡 優昌 武蔵大学, 経済学部, 教授 (40328927)
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キーワード | コモディティ / 流動性 / オルタナティブ投資 / 資源の呪い / 金融危機 |
研究概要 |
本研究プロジェクトは、コモディティ価格の変動特性を検証するとともに、コモディティ価格の変動が資源国に与える影響を考察することを目的とする。第一の目的「国際商品価格の決定およびコモディティ投資の意義に関する考察」に関しては、平成24年度の研究をさらに発展させ、その研究成果を公刊した。 代表者大野は構造VARモデルに基づきコモディティ価格に対するマクロ要因の影響を検証した。ITバブル崩壊後の金融緩和政策やその後の金融市場における流動性の弛緩化、もしくはリーマンショック時にコモディティ価格に対する流動性要因の影響が拡大していたとの結果を得たが、コモディティと株式等の伝統的な金融資産との相関の高まりは極度の流動性逼迫下でのポートフォリオ調整の影響によるものだけではなく、実需的要素に起因していた可能性も示唆された。 分担者茶野は分散不均一性調整済み相関係数やDCCモデルを用いて分析し、「コモディティの金融市場化」はあらゆる商品にあまねく見られる現象ではなく取引の多い特定の商品に限定されるものであり、「コモディティ・インデックスの金融商品化」とみなせる現象が起こっている可能性を指摘した。分担者神楽岡は対象商品をさらに拡張し、一般化ダイナミック・ファクター・モデルによって共通ファクターの抽出を試みた。 分担者林は、世界のコモディティ市場の取引は拡大の一途をたどる一方で、わが国におけるコモディティ取引の縮小基調には歯止めがかからない点に鑑み、わが国の総合取引所構想に関する考察を行った。 本研究プロジェクトの第二の目的「国際商品価格の動向と資源国への影響に関する考察」に関して、代表者大野は資源国への資本流入の決定要因を分析した。その結果、資源国における民主化は直接投資の拡大に必ずしも寄与していない点や、資源価格の高騰が短期資金の流入を促す可能性がある点などが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究プロジェクトの第1の研究目的「国際商品価格の決定およびコモディティ投資の意義に関する考察」については、研究成果を書籍発刊という形で公表し、ほぼ完了した。当該刊行物ではコモディティ市場の金融市場化を中心的概念としてとらえ、ITバブル崩壊以降の主要国における拡張的金融緩和政策や商品ETFなど新種のコモディティ関連投資商品の開発を背景に、従来の投資家の他に年金基金など新たなる主体がコモディティー投資の担い手として参入するようになったことから、コモディティ価格の変動特性にどのような変化が生じたかを考察した。 本研究では、コモディティ市場の金融市場化を示唆する結果が示されたものの、コモディティ価格の乱高下をもたらした要因は流動性要因のみならず実需的要因にも起因していた可能性があること、近年においてコモディティ価格と株価との連動性が高まる傾向が示されたものの、あらゆるコモディティに共通にみられた現象ではなく、コモディティ・インデックス投資の中核的商品において特に株価との相関が高まっていたとの結果が示された。 第2の研究目的「国際商品価格の動向と資源国への影響に関する考察」については、資源国向けの海外資本流入の決定要因について検証し、現在、英文学術雑誌に投稿中である。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は、主に第二の研究目的に関して集中的に取り組む予定である。特に、資源国における危機の発生可能性について考察したい。 コモディティ価格が上昇基調にある状態では、資源国経済は活況を呈し、また海外資本の受け入れも増大した。しかし、コモディティ価格の上昇が世界的な過剰流動性に起因していたのであれば、流動性が引き締められた際には、コモディティ価格の下落による輸出額の減少や海外資本流入の減少により、資源国経済が減速する可能性がある。特に、流動性が引き締められるまでの期間に海外資本の受け取りを急増させていた国では過剰消費が発生していたり、不動産市場をはじめとする国内の資産市場で適正水準を上回る価格上昇が発生していた可能性がある。2008年の世界金融危機以降、米国をはじめとする先進各国では大規模な金融緩和政策が実施されてきたが、量的緩和政策の出口戦略が模索され始めている。世界的な過剰流動性が引き締めに転じた場合にそれが過大評価された資源国に与える影響は看過できないものかもしれない。 そこで、資源国の危機発生可能性について検証する。分析手法としては、先行指標分析やプロビット分析を検討し、また資源国のCDSプレミアムを用いて、投資家サイドが資源国の危機発生可能性をどのように評価しているかを考察したい。 本研究テーマに関する実証分析で用いるデータは、Thomson ReutersのDatastream等より取得する予定であり、平成26年度もデータベースDatastreamを購入する。 平成26年度中に研究発表できる段階まで完成させ、年度中に国内のセミナー等で報告することをめざす。また、次年度には内外の学会で報告し、学術雑誌に投稿する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
これまで、本研究プロジェクトにおいてThomson Reutersから購入していたデータベースDatastreamを使用していたが、平成26年度に実施を予定している実証分析にもDatastreamに収録されているデータが必要になるため、平成26年度においても引き続きDatastreamのデータを継続できるよう、平成25年度における予算の執行を節約し、次年度への予算の繰り越しを優先した。 平成25年度の予算のうち繰り越された予算は、平成26年度において、Thomson Reuters社のデータベースDatastreamの購入費に充てる予定である。なお、繰越金を含めた平成26年度の予算だけではDatastreamの購入費全額を賄えないため、不足分は自己負担で補填する予定である。
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