研究課題/領域番号 |
24530563
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
大石 桂一 九州大学, 経済学研究科(研究院), 教授 (10284605)
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キーワード | 会計規制 / 会計基準設定 / アウトソース |
研究概要 |
本年度は研究計画に基づき、主として国際会計基準審議会(IASB)がグローバルな会計基準設定主体としての地位を確立する過程に関する研究を行った。その成果の一部を学術論文(大石桂一「グローバルな会計基準設定主体としてのIASB:IASCからIASBへの組織改革」『経済学研究』第80巻第5/6号、161-176頁)として公表した。研究の結果として明らかになった主要な点は以下の通りである。 1980年代におけるグローバル・スタンダードへの関心の高まりを受けて、米国証券取引委員会(SEC)は、証券監督者国際機構(IOSCO)を通じて、IASBの前身である国際会計基準委員会(IASC)への関与を強めていった。他方、1990年代に入ると、域内市場統合を目指す欧州連合(EU)も、IASCの公表する国際会計基準(IAS)を域内統一基準として採用する可能性を検討するようになった。そうした中、IASCはグローバルな会計基準設定主体にふさわしい体制を構築すべく、その組織改革に着手した。 米国を中心とするアングロ・アメリカ諸国は、少人数の専門家のみでボードを構成すべきとする「独立専門家モデル」を主張したのに対し、大陸欧州諸国は、様々な国や組織の代表によって大規模なボードが構成されるべきとする「代表性モデル」を主張した。当初、IASCは両者の混合モデルを模索したが、SECの強硬な姿勢の前に「代表性モデル」派は譲歩を余儀なくされ、結局は「独立専門家モデル」に依拠したボードの設置という結果に終わった。こうしてIASCはIASBへと改組されることになった。ここでIASBがその正統性の源泉として「代表性」ではなく「独立性」と「専門性」を選択したことが、その後EUをはじめとする多くの国・地域、さらには国際金融規制のネットワークから会計基準設定をアウトソースされる上での重要な要因となることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、(1)米国に関する歴史的研究、(2)日本に関する歴史的研究、および(3)IASBへのアウトソーシングに関する理論的・実証的研究、を3つの柱としている。このうち、(1)および(3)については、今年度までの研究によってほぼ目的を達成することができたと考えている。そこで、次年度には当該成果を単著として公刊する予定である。 このように、これまでのところは(1)と(3)の研究課題に注力していたため、(2)については未だ学術論文として公刊できるような成果はあげられていない。とりわけ、予定しているインタビュー調査が諸般の事情により実現していないため、早急に実施できるよう努めたい。とはいえ、3つの研究課題のうちの2つについては、ほぼ研究が完了していることから、おおむね研究は順調に進展していると判断している。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、今年度までの研究をふまえ、(1)日本に関する歴史的研究、および(2)日米の歴史的比較研究に取り組む予定である。具体的な研究計画は以下の通りである。 (1)に関しては、収集した資料(史料)および文献に基づいて、企業会計審議会が設置された経緯を明らかにするとともに、インタビュー調査を実施して、事実の裏付けを取る作業を行う。(2)に関しては、日本と米国において会計基準設定のアウトソーシングを巡る状況がどのように異なっていたのかを比較検討する。証券関連の法律が制定され、証券規制目的での会計基準設定が行われるようになったという共通性が見られるにもかかわらず、結果が異なっていたことのインプリケーションを明らかにすることが、ここでの課題である。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度は、予定していたインタビュー調査が諸般の事情により実施することができなかった。また、今年度は主に文献研究を行ったため、支出の多くは図書購入費であり、旅費や備品購入費があまり発生しなかった。そうしたことから、予算と実際使用額との間に差異が生じた。 次年度は、インタビュー調査の実現に向けて努力したい。それ以外については、当初の計画の通り、文献・資料・史料を購入するとともに、成果発表および資料収集のために旅費を使用する。
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