研究課題/領域番号 |
24530583
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
薄井 彰 早稲田大学, 商学学術院, 教授 (90193870)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 財務会計 |
研究概要 |
本年度は、サンプル期間25年(1985-2009年)、銀行、証券、保険業を除く全上場企業のサンプルにもとづいて、決算短信制度が株式市場の価格形成に有効に機能しているかどうかを調査した。実証分析の結果、過去25年間にわたって、公表日、その翌営業日と翌々営業日の3営業日に、決算短信情報が統計的に有意に株価に織り込まれていることが明らかになった。 異常リターンのボラティリティは決算短信公表日の翌営業日をピークとしている。これは決算短信が証券取引所の取引終了後に公表されることが多いからである。決算短信情報は公表日の翌営業日の株価におおむね反映される傾向にある。異常売買高もまた決算短信公表日の翌営業日がピークである。決算短信情報にもとづいた取引は、決算短信公表日、その翌営業日、翌々営業日に集中している。 2000年以降、会計制度の改革、四半期報告書の開示、内部統制制度の導入、IFRSと日本会計基準のコンバージョンが相次いでいる。連結決算と個別決算の同時公表の割合は1999年の50%から2007年以降は100%になり、公表に要する日数も60日から40日に大幅に短縮されている。この間、情報作成者のコストは増大していると予想される。 わが国の決算短信制度は実績情報と経営者の業績予想を同時に開示する。この決算短信制度は国際的にみて独自のものである。本研究の長期分析によれば、決算短信制度は過去25年にわたって株式市場の価格形成に有効に機能していることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は経済分析プロジェクトの一環として、決算短信制度の変換点の抽出を行った。大規模なサンプルに基づいて、決算短信制度は過去25年にわたって株式市場の価格形成に有効に機能していることが明らかにすることができた。歴史分析プロジェクトでは、連続インタビュー調査を実施し、1930-50年代のわが国の企業制度の発展過程と変革要因、および、上野道輔、黒澤清、中西寅雄ら主要なアクターの役割を明らかにすることができた。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度に実施する歴史分析プロジェクトと経済分析プロジェクトの分析結果から、1970年代後半(商法会計・証券取引法会計・法人税法会計のトライアングル体制)の確立時期)、1990年代後半(個別財務諸表から連結財務諸表主体への移行)、2000年代後半(IFRSへのコンバージェンス)の移行過程を解析する。さらに、1960年後半から1970年代のADR発行に関連して、旧大蔵省が優良成長企業に対して米国SEC会計基準適用を導入した政策過程を解明する。 経済的影響モデルに、原価項目の透明性とコーポレートガバナンス項目を追加して、新しい会計基準の市場および企業への経済的影響を推計する。検証仮説は、経営者が新会計基準を自発的に適用するほど、原価項目の透明性が高いほど、コーポレートガバナンスが機能しているほど、資本コストが低い、株価の流動性が高い、あるいは、Tobinのqが高いことである。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度はWindowsOSの変更時期に重なり、データベース開発・解析用ためのPC等の物品・用品の導入を見送った。次年度には、PCとプリンター、および統計ソフトを購入する予定である。
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