政策投資目的保有株式、いわゆる持ち合い株式の開示が充実する一方で、純投資目的保有株式の開示は後退する傾向にある。企業会計審議会の「国際会計基準(IFRS)への対応のあり方に関する当面の方針」の答申をうけて、2014年、「財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則等の一部を改正する内閣府令」(平成26年3月26日内閣府令第19号)が公布され(同日施行)、連結財務諸表提出会社については2014年3月期から個別財務諸表開示の簡素化が進められた。これは経団連の主張とも一致する。この開示簡素化では、上場会社については有価証券明細表の開示が免除されることになった。この結果、会社が自発的に開示を行わなければ、純投資目的保有株式の銘柄、株式数、貸借対照表計上額などの情報が得られなくなっている。有価証券の長期投資のうち、政策保有目的投資の割合は、近年、減少傾向にある。このため純投資目的保有株式開示の相対的な重要性が高まっている。企業の投資行動をモニタリングするためには、数値情報等の開示が不可欠である。本研究の実証結果によれば、外国人投資家が市場に放出された持ち合い株式の主たる受け皿になっている。経営者と株式持ち合いの相手の情報非対称性の程度は比較的小さいと推察される。一方、外国人投資家に対しては積極的な情報開示が必要であろう。本研究の実証結果はこうした株主構成の変容が経営者にグローバルな情報開示を求めていることを示唆している。
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