研究課題/領域番号 |
24530618
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
水原 俊博 信州大学, 人文学部, 准教授 (10409542)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ボードリヤール / 社会理論 / シミュレーション / ポストモダン / 象徴交換 / 情報社会 |
研究概要 |
本研究の課題は「ボードリヤールの社会理論の再構成、及びその受容と影響についての批判的検討」である。研究の具体的な取り組みの概要は以下のとおり。(1)ボードリヤールの未邦訳を含む文献(一次文献)を精査して、(2)研究の手薄であった「悪」「不可能な交換」といった諸概念を明確化し、(3)ボードリヤールの社会理論を情報社会論的な視点からの理論的に再構成する。さらに、(4)ボードリヤールの社会理論の多方面での影響を整理して、その社会的、文化的意味を明らかにし考察する。なお、(1)(2)(3)の研究では、フランス思想、文化人類学、メディア論といった関連する分野の諸研究(関連文献)とボードリヤールの社会理論との関係性を明らかにするとともに、ボードリヤールに関する先行研究(二次文献)を吟味することも構想している。 平成24年度は研究構想のうち、(1)(2)(3)について順次取り組んできた。まずは、ボードリヤールの原著、英訳書、邦訳書(一次文献)、二次文献、関連文献を収集し、(1)(2)については、文献を順次精査するとともに、諸概念の明確化に取り組んだ。一次文献の精査はひととおり終えたものの、関連文献、二次文献の吟味は済んでいないこともあり、諸概念を明確化し、関連する分野の諸研究とボードリヤールの社会理論との関係性を明らかにできたわけではない。こうした前段階的な研究があまり進んでいないため、(3)については、方向性は漠然とは見えているものの、研究の端緒を開くにとどまった。 以上のことから、平成24年度は、学会報告、論文として研究成果を挙げられていない。だが、平成24年度が研究期間の初年度であること、社会理論研究の性格上、研究成果をすぐに挙げられるとは考えにくいこと、研究成果の発表スケジュールを考慮すると、目立った研究成果がまだないことは残念ではあるが、致し方ないように思われる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究プロジェクトは、フランスの社会学者、社会理論家であるボードリヤールの(1)文献精査、(2)諸概念の明確化、(3)理論的再構成、(4)他分野への影響の考察に大別される。このうち、平成24年度は(1)(2)(3)を中心に取り組んだ。とはいえ、目立った研究成果は挙げられておらず、(1)(2)は研究の途上段階、(3)は研究の端緒を開くにとどまった。以上のことから、研究の現在までに達成度は「やや遅れている」と判断する。 達成度については決して満足いくものではないが、その理由のうち、交付申請書の実施計画からみて想定できなかったものとしては、学内業務などの臨時的な負担増により、研究時間の確保が思いのほか、難しかったことがあげられる。
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今後の研究の推進方策 |
繰り返しになるが、本研究プロジェクトは、フランスの社会学者、社会理論家であるボードリヤールの(1)文献精査、(2)諸概念の明確化、(3)理論的再構成、(4)多分野への影響の考察に大別される。今後も研究プロジェクトやその方法を変更することは考えていない。これまで同様に、研究の途上段階にある(1)(2)(3)とともに、平成25年度からは(4)についても研究を着手していきたいと考えている。 具体的な推進方策としては、上述した4つの項目からなる研究構想について、(1)(2)(3)(4)というように順次取り組むのではなく、これら4つの項目が相互に連関していると考えられるため、すべての項目の研究に併行して取り組むことを計画している。こうすることで、(4)がそうであるように、項目によっては現実の具体的な事象を多く含むために、研究の取り組みが迅速化し、成果を比較的早期にあげることが期待でき、それが他の項目の研究を促進する効果を少なからずもたらすと考えられる。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度に未使用額が生じたが、文献を多用する社会理論研究では、本来的には研究と併行しながら、必要とする多様な文献を吟味して収集すべきだと考える。こうした研究指針から、平成24年度については思うように研究が進まなかったために、研究対象であるボードリヤールの社会理論の二次文献、関連文献を当初予定していたほどには収集できなかったことが、未使用額の発生に大きく影響した。 次年度の平成25年度については、同年度の直接経費と前年度未使用額との合計のうち、当初の予定どおり、二次文献、関連文献の収集に大部分をあて、他は研究会、学会参加のための旅費、PCソフト、プリンタ用紙といった文具などの消耗品費にあてる計画を立てている。
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