研究課題/領域番号 |
24530618
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
水原 俊博 信州大学, 人文学部, 准教授 (10409542)
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キーワード | シミュレーション / ポストモダン / 不可能な交換 / 情報社会 / 悪 |
研究概要 |
本研究の課題は「ボードリヤールの社会理論の再構成、及びその受容と影響についての批判的検討」である。研究の具体的な取り組みの概要は以下のとおりである。(1)ボードリヤールの未邦訳を含む文献(一次文献)を精査して、(2)研究の手薄であった「悪」「不可能な交換」といった諸概念を明確化し、(3)ボードリヤールの社会理論を情報社会論的な視点から理論的に再構成する。さらに、(4)ボードリヤールの社会理論の多方面での影響を整理して、その社会的、文化的意味を明らかにし考察する。なお、(1)(2)(3)の研究では、フランス思想、文化人類学、メディア論といった関連する分野の諸研究(関連文献)とボードリヤールの社会理論との関係性を明らかにするとともに、ボードリヤールに関する先行研究(二次文献)を吟味することも構想している。 平成25年度は研究構想のうち、(1)(2)(3)について順次取り組んできた。まずは、前年度から引き続き、ボードリヤールの原著、英訳書、邦訳書(一次文献)、二次文献、関連文献を収集し、(1)(2)については、文献を順次精査するとともに、諸概念の明確化に取り組んだ。一次文献の精査はひととおり終了したが、諸概念を明確化する作業は思いのほか難航して現在にいたっている。中間的な成果についてはは平成25年度に学会発表、論文としてまとめることはできた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究は、フランスの社会学者、社会理論家であるボードリヤールの(1)文献精査、(2)諸概念の明確化、(3)理論的再構成、(4)他分野への影響の考察に大別される。このうち、平成25年度は(1)(2)(3)を中心に取り組んだ。(1)(2)は研究については中間的な成果をあげた。(3)については平成25年度後半から研究に取り組んでいる段階であり、(4)については、研究の端緒を開くにとどまり、成果があがっているとはいえない。以上より、研究の現在までに達成度は「やや遅れている」と判断する。 その理由としては、第一に、本研究が社会学の理論研究、あるいは社会理論研究のため、分野の性格上、短期間で研究成果をあげにくいこと、第二に、研究成果の発表スケジュール上の問題、すなわち、研究成果の発表申請が年度の前半に集中しているため、年度の後半で研究成果を発表する機会が得にくいことが影響したと思われる。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は、フランスの社会学者、社会理論家であるボードリヤールの(1)文献精査、(2)諸概念の明確化、(3)理論的再構成、(4)多分野への影響の考察に大別される。今後も研究計画やその方法を変更することはせずに、平成26年度は(3)(4)についても集中的に研究し、本研究全体の総括的な成果をあげられるようにしたい。 具体的な推進方策としては、上述した4つの項目からなる研究構想について、(1)(2)(3)(4)の項目が相互に連関していると考えられるため、これまでと通り、すべての項目の研究に併行して取り組むことを計画している。こうすることで、(4)等は項目によっては現実の具体的な事象を多く含むために、研究の取り組みが迅速化することが期待でき、それが他の項目の研究を促進する効果を少なからずもたらすと考えられる。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額が生じたが、文献を多用する社会理論研究では、必要とする多様な文献を吟味して購入すべきだと考える。研究対象であるボードリヤールの社会理論の二次文献、関連文献を平成25年度に購入しなかったため、次年度使用額が生じた。 平成26年度は、研究対象であるボードリヤールの社会理論の二次文献、関連文献の購入、さらに、研究会、学会参加のための旅費、情報機器、PCソフト、プリンタ用紙といった文具などの消耗品費にあてる計画を立てている。
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