研究課題/領域番号 |
24530833
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 川村学園女子大学 |
研究代表者 |
蓮見 元子 川村学園女子大学, 教育学部, 教授 (60156304)
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研究分担者 |
北原 靖子 川村学園女子大学, 文学部, 教授 (60221917)
川嶋 健太郎 尚絅大学短期大学部, その他部局等, 准教授 (80360204)
浅井 義弘 川村学園女子大学, 教育学部, 教授 (20059801)
佐藤 哲康 川村学園女子大学, 文学部, 助教 (60637867)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 放課後 / 児童 / 大学生 / タッチパネルPC / 自己点検評価 / 放課後子ども教室 / 評価尺度 / 携帯型タブレット端末 |
研究概要 |
本研究は主に4つの研究から構成されている。24年度における研究実績は以下の通りである。①川嶋・蓮見・北原(2013)では先に開発した子ども自身が行いうる放課後生活空間自己点検評価システムの実施上のトラブルを精査した。集団場面でのタッチパネルアンケートトラブルは,機器のトラブルと子どもの行動によるトラブルの2つに分類され,アンケート実施者は常にトラブルに対処する必要があり,効率的ではなかった。そこで24年度では家庭で携帯型タブレット端末(Apple社製iPad)を用いて毎日実施可能な携帯型アンケートアプリケーション(児童用・保護者用)を開発した。②子どもの放課後生活空間を評価できる信頼性・妥当性のある放課後生活空間評価尺度を作成し、それらを使って、放課後の生活空間を明らかにすることをめざした。今年度は、小学生低学年用・保護者用、及び大学生用の放課後生活空間尺度を作成した(蓮見・北原・川嶋、2012)。大学生用では、120名に質問紙調査を実施し、放課後の生活実態と大学生用の尺度試案を完成させた。③「放課後子ども教室」の育ち効果のエビデンスを検証するために、500組に及ぶ低学年児童およびその保護者に質問紙調査を実施した。24年度は、低学年児童が質問紙法によって放課後生活評価を行う場合、どのような課題が生じるかについて、まず手続き上の課題を探った。45学級分の実施状況報告を分析し、併せて1年生2学級では実際の回答場面の観察も行った。その結果、1年生では「アンケート用紙を封筒から出す」「先生が読んでいるところを見る」「消しゴムを使う」など作業上の困難が多々あり、配慮を要することが明らかとなった。④放課後生活空間の質を向上するために「放課後子ども教室」を利用する保護者と運営するスタッフ双方から現状と問題点についてインタビューを実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の達成度については以下のようである。①児童用携帯型アンケートアプリケーションでは,児童によるアンケート開始,音声及び文字による質問の提示,児童によるタッチパネル操作による回答,児童によるアンケート実施回数の把握(これまで何回アンケートに回答したか)を行えるようにした。また保護者用アプリケーションでは児童のアンケート回答をインターネット上のサーバーを介して確認することを可能にした。②小学生低学年用・保護者用、及び大学生用の放課後生活空間尺度を作成し、大規模な調査を実施した。蓮見・北原・川嶋(2012)は、因子分析をもとに低学年児童においては8項目の評価尺度、およびその保護者に対しては、12項目の放課後生活空間評価尺度を作成した。しかしながら、児童用・保護者用として信頼性・妥当性の本格的な検討は、当初の予定通り次年度に持ち越された。なお、大学生については、自己の放課後の生活空間評価を評価するための、27項目7因子からなる放課後生活空間評価尺度の試案が作成された。多くの大学生は将来に備えて勉学に勤しむより、長時間アルバイトを行っている実態が明らかになった。③「ほうかご こども ちょうさ」は低学年児童本人に尋ねるもので、14質問項目からなり、2件法で回答を求めるものであった。またそのうち12項目は、平行して実施した「放課後子ども調査」の児童の保護者に対しても4件法で評定を依頼しており、相互参照が可能であった。子どもの質問紙に対する理解上の課題を探るために、3下位尺度についての親子評定間の相関を見た。全学年で中程度の相関があり、尺度は一定の妥当性を備えていると評価できた。安全安心面の評価については、さらに工夫を要することが明らかとなった(北原・蓮見・川嶋・佐藤・生駒,2013b)。低学年児童でも、質問紙によって放課後に対する声を収集できる見通しが得られているといえよう。
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今後の研究の推進方策 |
今後の推進方策については、以下の通りである。①携帯型アンケートアプリケーションの完成度を高め,インターネットからアプリケーションを配信可能にする。また保護者・児童に協力を求めて, アンケートアプリケーションの実証実験を行う。②信頼性・妥当性のある児童用、大学生用、保護者用の放課後生活空間評価尺度を完成させると共に、そこから得られる放課後の生活実態を明らかにする。また、25年度は中学生用、高校生用の評価尺度にも着手し、学校段階ごとに使用できる放課後生活空間評価尺度の完成を目指す。③保護者版・児童版各々の放課後生活空間評価尺度を完成させると共に、相互の関連性について明確化する必要がある。放課後の実情には、児童でも保護者でも同じように評価できるところ、児童に聞いても理解してもらいにくく信頼性のある回答が得られにくいところ、逆に、保護者に聞いても実情がわからず正しく答えられないところもあるはずである。これらを整理できれば、保護者評定と一致度が高い下位尺度は児童本人の代わりに保護者評定を用いてよいなど、尺度の効率的な利用が可能になるであろう。また25年度は、我々の各種調査に協力し子どもの放課後居場所つくりを積極的に推進している我孫子市を事例として、地域の居場所づくり評価指標の在り方についても検討する予定である。④児童の放課後の生活の実情を明らかにすると同時に、求められる放課後のあり方についても検討する予定である。すなわち、児童・保護者が期待する放課後と満足感についても含めた放課後生活空間評価尺度を完成させるためにインタビューを重ねながら質問内容の精査を行う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度の研究費の使用計画は以下の通りである。①携帯型アンケートアプリケーションの完成度を高め,インターネットからアプリケーションを配信可能にし、保護者・児童に協力を求めてアンケートアプリケーションの実証実験を行うために、同時に何組かの実施が可能となる複数のIT機器が必要となる。実施に伴い、説明したり、実施を補助したり、児童の行動を観察する者(謝金)を必要とする。②放課後評価尺度の保護者版・児童版の完成は、次年度の中心課題である。大規模調査を行うために印刷費、交通費、データー入力謝金、分析用ソフトなどが必要となる。③現在、調査対象としている我孫子市は放課後子ども教室事業を展開しており、その活動状況について点検評価する委員会も定期的に開催されている。報告の席上では担当スタッフによる報告説明、利用人数等の集計資料、保護者たち有志が行ったアンケートなどが混在し、個々の教室事情が異なることもあいまって、錯綜した諸報告から妥当な点検評価を導くには交通整理が必要である(北原・蓮見・川嶋・浅井,2012a)。我々がこれまで行ってきた諸調査(質問紙やPCアンケートなど)の結果も統合し(北原・蓮見・川嶋・浅井,2012b)、それらを加えた各種報告から、放課後教室の設置評価に関わるエビデンスのレベルと内容を整理する(統計ソフト,図書)。それに先立ち、各種報告を行った関係者各位から改めて趣旨説明をいただき、逐語分析を行って論点の整理を行う(会議費、謝金、質的分析ソフト)。開発中の放課後生活空間評価尺度をはじめ透明性汎用性の高い評価ツールについても提案してゆきたい。④これらの成果を今年度も学会にて発表するため、交通費、学会大会参加費、宿泊費などを必要とする。
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