研究課題/領域番号 |
24530924
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
日野 泰志 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (00386567)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 漢字表記語 / 意味符号化 / 直接経路 / 音韻媒介経路 |
研究実績の概要 |
平成27年度までに測定したかな・漢字表記語の音韻―形態対応の一貫性のデータと,それをもとに漢字表記語の音韻―形態対応の一貫性を操作した一連の実験で得られたデータを論文にまとめ,海外の学術雑誌に投稿・審査中である。最初に投稿した雑誌では出版に至らなかったことから,別の雑誌に投稿し,現在,審査中である。 また,平成27年度には,カタカナ語を使った形態隣接語の意味活性化による意味的プライミング効果に注目することで,形態―意味レベル間の交互作用の有無に関する問題を検討した研究論文が出版に至った。 さらに,平成27年度には,漢字表記語の意味符号化経路に関する研究データの収集を行った。Hino, Lupker & Taylor (2012)は,カタカナ語の形態・音韻隣接語の意味活性化による効果の有無を検討することで,カタカナ語の意味符号化経路について検討した。彼らの実験では,仮名表記語を読む際に,形態隣接語の意味活性化による効果は観察されたが,音韻隣接語の意味活性化による効果は観察されなかった。この結果から,カタカナ語の意味符号化では,形態情報から,直接,意味情報が活性化される直接経路のみが使用されるものと考えられる。そこで,Hino et al.と同様の方法を用いて漢字二字熟語に対する形態・音韻隣接語の意味活性化による効果について観察を試みたところ,漢字熟語の場合,低頻度語では形態隣接語ばかりでなく音韻隣接語の意味活性化による効果も観察されたが,高頻度語では形態隣接語の意味活性化による効果しか観察されなかった。これらのデータとHino et al.によるデータから,語の意味符号化経路は,語の形態親近性に依存し,親近性が低い語に対しては音韻媒介経路も利用されるが,親近性が高い語では,直接経路のみが利用されることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在,仮名・漢字表記語の音韻―形態対応の一貫性に関するデータと漢字表記語の一貫性効果に関する実験データをもとに執筆した論文が審査中である。また,カタカナ語を使った形態隣接語の意味活性化による意味的プライミング効果に注目し,形態―意味間の交互作用に関する問題を扱った研究論文を執筆し,出版することができた。さらに,漢字表記語の形態・音韻隣接語の意味活性化による効果の観察から漢字表記語の意味符号化経路に関する問題を扱った論文の執筆を進めている。この研究については,さらに,追加のデータ収集も予定しているが,こうした状況から,研究はおおむね順調に進んでいると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は,現在,審査中の論文の出版を目指すと共に,漢字表記語の形態・音韻隣接語の意味符号化による効果の観察を試みた実験のデータ収集を完了すると共に,論文執筆を進める予定である。また,すでに,ほぼデータ収集が完了している同音語プライミング効果に関する実験データについても,論文執筆を進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
計画に沿って経費を使用したが,研究補助者や実験参加者への謝礼が若干残った。
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次年度使用額の使用計画 |
研究補助者への謝礼および実験参加者への謝礼として使用する予定である。
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