研究課題/領域番号 |
24531027
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 聖隷クリストファー大学 |
研究代表者 |
成松 美枝 聖隷クリストファー大学, 看護学部, 准教授 (40440812)
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研究分担者 |
菅野 文彦 静岡大学, 教育学部, 教授 (30216288)
梅澤 収 静岡大学, 教育学部, 教授 (90223601)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 教師教育 / 教員養成 / 教員研修 / 学生の評価 / カリキュラム / パフォーマンスを基礎にした評価 |
研究概要 |
本研究の目的は、「高い適格性を持つ教師(Highly Qualified Teachers)」を確保するためにアメリカの大学は教師教育においてどのような改革を進めているのか、その実態と評価を明らかにすることである。ウィスコンシン州立大学を事例にして、(1)「教員養成のカリキュラム」と「修了認定の学生評価」の実態と効果 (2)「教員免許の更新」に際して各教員が大学で行う「単位取得(約6単位)」と現場教員と大学教員による評価」(3)他州と比較つつ、米国の大学の「教員養成」と「現職教育」の適切性を評価することを目標とした。 今年度は第1の課題である「教員養成カリキュラム」の実態を明らかにすべく、課程修了認定の「学生評価」の基準設定と評価の導入効果について、ウィスコンシン州立大学ミルウォーキー校の教員を対象にインタビュー調査を行った(平成24年9月3~5日実施)。その結果当大学では、州の「ウィスコンシン州教員スタンダード(10 Wisconsin Teacher Standards)」を元に独自の「ウィスコンシン州立大学ミルウォーキー校スタンダード」を設定し、スタンダード到達を目指したカリキュラムを編成して各学期に大学の授業と教育実習を交えた教育実践を積みながら、Eポートフォリオによる①指導案 ②授業の省察 ③生徒の作品など記録を元に現場教育実践の評価を蓄積していく。修了認定の評価としては、現在州主導で導入段階にあるTPA(Teaching Performance Assessment)により、学生の授業実践をビデオ撮影によって第3者が評価する方向で進められている。各教科と教職に関する専門知識の修得は、全米レベルの「プラキシス(Praxis 1・2)」によって評価されているが、学生評価は州主導の「効果的な指導のできる教員」の政策下に展開される。以上のことが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度は、研究目的の第1課題である「ウィスコンシン州立大学の教員養成の教育カリキュラムの実態」に関してほぼすべての目標を明らかにすることができた。ウィスコンシン州立大学ミルウォーキー校の教員に対してインタビュー調査を実施した結果、当大学の教員養成の理念と教育スタンダードの構築の過程と教育実践、さらに学生評価の改革の実態が明らかになった。特に、2014年より州全域で導入される、教員養成機関の学生評価としてのTPA(Teaching Performance Assessment)は、カリフォルニア州のピアソン社が開発した評価方法で既に他州で導入が進んでいるが、同州では実験段階である。TPAをはじめとする新たな教員養成システムの枠組みは理解できたが、実際に教員側にどのように受けいれられているのか、今後の調査が必要である。 第2の課題としての「現職教員の研修」に関しては、「教員免許状更新」のための「プロフェッショナル・ディベロップメントプラン(PDP)」をはじめとする、「リーディングプログラム」などの研修について実態を把握したものの、新たに2014年より州主導で導入される「効果的な指導のできる教員(Educator Effectiveness)」の下でどのような研修体制に変更されるのか、さらなる調査が必要である。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度はウィスコンシン州立大学ミルウォーキー校の「教員養成」に関して調査を行ったが、平成25年度以降は同大学の現職教育としての教員研修の実施に関する調査を進める。 昨年度よりウィスコンシン州が特定の学区において実験的導入を開始した、新しい教員評価制度としての「2011 Wisconsin Educator Effecitiveness System」 の実態を明らかにすると同時に、シャルロット・ダニエルソンが開発した評価システムの原型である "The Framework for Teaching Evaluation Instrument"の原理と他州での導入効果を検証する。特に、2000年から同州が導入し州立大学が中心となって支援してきた「教員免許更新」のための「プロフェッショナル・ディべロップメントプラン(PDP)」の実施とその効果を検証するとともに、2014年に新たに導入される教員評価との関連性について、州教育行政局担当者へのインタビューを中心に調査を進める。州教員組合による強い反対運動の下で導入される新しい「教員評価制度」について、実験的導入を行っている学区においては現場教員側からどのような反応が得られているのか、教員側の理解を検討する。 最終的に、州主導で進められる大学での教員養成と現職教育の改革について、大学教員と学校現場の教員はどのように評価しているのかに関する調査を進める。 その上で、他州の大学の教員養成と現職研修体制について他州での実施状況を把握するため他州の大学機関でインタビュー調査を試みたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度の残金分としての研究代表者(40440812)の7,826円は、平成25年度の旅費に使用する計画である。また、研究分担者(30216288)の残金分165,926円は、同時期に別機関からの研究費支給が生じたため残額となったものであるが、平成25年度の物品費に使用する予定である。 平成25年度は、ウィスコンシン州が大学との連携により現職教員に対して実施している研修プログラムの実施と、2014年より新しい教員評価として導入される "2011Wisconsin Educator Effectiveness System"の実施に関して調査を進める。 今年度の研究代表者の直接経費請求額 800,000円は、同州での教員評価システムの実施に関する調査並びに教員免許状更新をはじめとする「現職研修システム」の実態調査に必要な、調査のための旅費(渡航・滞在費1回につき約20万円×2回)、通信費(10万円)、謝金(10万円) 書籍・文献購入費(10万円)に必要な額である。 また研究分担者の請求額10万円(1人5万円×2人)は、国内での情報収集と関連書籍の購入に必要な金額である。
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