研究課題/領域番号 |
24531098
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
市川 啓 山形大学, 教育文化学部, 准教授 (20624745)
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研究分担者 |
田端 輝彦 宮城教育大学, 教育学部, 教授 (80344745)
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キーワード | 乗法概念領域 |
研究概要 |
本研究は、乗法概念領域(Vergnaud.G)に着目したものである。乗法概念領域とは、乗除法や比例、単位量当たりの大きさや割合等を含む概念間の有機的なつながりをとらえた枠組みである。本研究では、乗法概念領域における概念や推論の進展を意図した実験授業を構想し実施した上で、子ども達の理解や思考の様相をとらえていく。その一方で,それらをとらえる枠組みを構築・精緻化していく。この一連の活動を通し、学校現場で役に立つ学習指導や評価に関する示唆を得ることが本研究の目的である。平成25年度は、以下のような成果を得ている。 (1)昭和43年版の教科書並びに教師用書の教材研究を行った。割合の概念形成を意図した下の学年からの分数の扱いに関する具体的なカリキュラムが明らかになった。 (2)概念の進展をとらえる枠組みとしてS.Lamon の「Unitizing」と「Norming」に着目してきた。「Unitizing」する際、「ユニットの均質性に着目する」という新たな視点を入れることができた。これにより、等分比例を認めるプロセスがこれまでより精緻に検討できるようになった。 (3)「等分除的に分数でわることの意味を検討する実験授業」(小6対象)を公立学校1学級、国立大学附属小学校1学級で行った。また、これまで行ってきた実験授業の分析と考察を進めた。特に、小4を対象にした「割進みの計算が未習で、計算手続きによって倍が求められない児童を対象に「小数倍」を考えさせる実践授業」を考察し、次のア)、イ)、ウ)3人の児童の思考の様相をモデルとして表し、その差異を明確にすることができた。ア)関係をうまく倍で表せた児童、イ)誤った加法方略により正しく倍が表せない児童、ウ)はじめは正しく表せなかったが授業後に表せるようになった児童。また、小5を対象にした「同じ割合を考えさせる実践授業」の考察から、子どもが小数倍を認めていくときのプロセスの一端を明らかにすることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
25年度は、小6と中1を対象にした実験授業を計画していた。小6は分数のわり算の授業を予定通りに実施できた。これにより、この2年間で小5・小6・中1と予定していた全ての学年で実験授業を行い、臨床データをとることができた。 しかしながら25年度に予定した中1の実験授業に関しては、24年度の授業者の人事異動の関係で予定通り行うことができなかった。そこで、小5の「分数倍」の実験授業を構想、計画したが、インフルエンザによる学級閉鎖等に伴う日程変更等から、実施を見送らざるを得なくなった。 以上のことから(3)とした
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今後の研究の推進方策 |
この2年間の研究を踏まえ、不足している臨床データを収集していく。その際、実験授業にこだわらず、インタビュー調査などデータの収集の仕方を工夫していく。 26年度は最終年であるので、研究のまとめにむけて考察を進めていく。
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