研究課題/領域番号 |
24531112
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研究機関 | 愛知教育大学 |
研究代表者 |
近藤 裕幸 愛知教育大学, 教育学部, 准教授 (40583422)
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キーワード | 地理教育 / 教科書 / 高等女学校 |
研究概要 |
本研究の目的は,戦前にあった高等女学校における地理科の教育内容を分析することによって,男女の教育内容の差異を明確にし,その構造と差異の要因を明らかにすることである。 25年度では、大きく3つの目標が設定された。1 他教科の教育史研究との比較、2 高等女学校の地理科教科書の収集および分析、3 統計処理の習熟であった。1については、歴史教育と地理教育との比較のためにデータ収集を行った。地理教育にとってもっとも近接している歴史教育との比較は、地理教育の特徴を浮かび上がらせるためには欠かせないといえるからである。2については、高等女学校の地理科教科書をコピー、購入するなどして収集している。これについては順調である。3については、統計的な分析は一定程度にとどめることにした。定量的に分析するところは教科書のページ数などにとどめ、教科書内容の分析には定性的な手法が向いていると考えたためである。 その他に、25年度には、戦前の中等教育校種である師範学校の地理教育について分析した。師範学校は小学校教員を養成するための学校であり、今日制度上存在しない。明治から敗戦までの間における師範学校で用いられていた地理科教科書は中学校のものとどのような違いがみられるのか、さらにはそこにも性差があるのではないかという考えのもと研究を進めた。その結果、師範学校では中学校と高等女学校の内容差にみられるものとは全くことなり、ほとんど同じ教科書を用いていたことがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
戦前期の中学校の地理教育を軸として、師範学校における地理教育や、地理教育と国策遂行とのかかわりを明らかにしてきた。これは本研究が目指していた、高等女学校における地理科の教育内容を分析することとは乖離していると思われるかもしれないが、「中学校ー師範学校ー高等女学校」と範囲を広げることで、より多面的に中等教育段階の地理教育の様相を描きだせるため、プラスになりこそすれマイナスには全くならない。 戦前にあった高等女学校における地理科の教育内容を分析することによって,男女の教育内容の差異を明確にし,その構造と差異の要因を明らかにすることにつながっていると考えられる。 このような理由からおおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
ほぼ当初の予定通り遂行する予定であるが、若干変更する。教科書文責の手法では、定量的な分析はせず、定性的な手法を用いることである。内容では、1中学校と高等女学校の地理教授における性差の究明、2師範学校と女子師範学校の地理教授における性差の究明、3歴史教授と地理教授における性差の究明によって、「中学校ー高等女学校」だけに限定していた研究を、さらに「中学校ー師範学校ー高等女学校」に範囲を広げることで、より多面的に中等教育段階の地理教育の様相を描きだせると考える。1については、順調に進められているため、引き続き教科書を収集し、研究内容分析の精度をたかめていく。2については、26年度の核となる研究テーマであるため、教科書収集を急ぎ、その内容の特徴を研究する。3については特に歴史教科書の収集が遅れているため、早急に行いたい。 以上の分析結果については論文にまとめ,国内のいくつかの地理学会にて発表もしくは投稿する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度に購入予定だった分析用パソコンを平成26年度の購入に変更したため。 コピー費として5万円をあてる。資料収集や資料分類の助手のために経費を10万円をあてる。持ち運びができる分析用のパソコンを購入する予定である。今後は交通費が最も必要になると考えられるため優先してそれにあてたい。
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