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2012 年度 実施状況報告書

自閉症スペクトラム障害の自動詞的行為と他動詞的行為の意味理解と模倣に関する研究

研究課題

研究課題/領域番号 24531259
研究種目

基盤研究(C)

研究機関作新学院大学

研究代表者

田中 見太郎  作新学院大学, 経営学部, 教授 (70217024)

研究分担者 高浜 浩二  作新学院大学, 人間文化学部, 准教授 (40616299)
諸冨 隆  作新学院大学, 人間文化学部, 名誉教授 (60003951)
松本 秀彦  作新学院大学, 人間文化学部, 准教授 (70348093)
田所 摂寿  作新学院大学, 人間文化学部, 准教授 (80616300)
研究期間 (年度) 2012-04-01 – 2015-03-31
キーワード自閉症スペクトラム障害 / ミラーメカニズム / 壊れた鏡仮説 / 自動詞的行為 / 他動詞的行為 / μ律動の減衰 / バイオロジカルモーション / 心の理論
研究概要

①研究全体の理論的基盤として、人間のミラーニューロンシステムMNSが、定型発達TDの幼児期の他者理解能力にどこまで関わっているかを考察するレビュー論文を「心理学評論」に投稿した(投稿中)。MNSとTDの他者理解能力の関係を考察することで、MNSに障害が生じた場合―「壊れた鏡仮説」はこれをASDの原因と考えるのだが―何が起きるのかを明確にすることが、この論文の目的である。またMNSが「他我問題」とどのように関連するかを考察する論文を「科学哲学」に投稿した(投稿中)。
②Muthukumarswamy et al.やOberman and Ramachandranは、自己の運動(手の開閉)の際に頭皮上の中心部から導出されるμ成分が減衰するだけでなく、他者の同じ行為を観察するときにも、同じくμ律動の減衰が生じることを報告しており、これが人間のミラーニューロンシステムの存在を実証する証拠の一つとみなされている。そこで、本実験では、先行研究のパラダイムに従い、自らの手の開閉及び他者の手の開閉の観察時に、μ律動の減衰が生じるかどうかの検討を行うと共に、自閉症指数(autism quotient,AQ)とμ律動の減衰との間の関係について分析を行った。この実験結果を第31回日本生理心理学会大会において発表した。
③幼児は、自分が有する知識は他者も有すると考えがちで、幼児のこの傾向は「知識の呪い」と呼ばれ、幼児の誤信念理解を妨げる原因と考えられている。そこで、「知識の呪い」が真に幼児の誤信念理解を妨げるか否かを確かめるために、通常の「誤信念課題」に「無知識課題」を組み入れた実験を計画し、これに沿った絵本を作成し、宇都宮市内の幼稚園で3~6歳児を対象に実験を実施し、今も継続中である。また、「心の理論」特にメタ表象能力を心理-哲学的に考察した論文を「哲学」に投稿した(投稿中)。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

本研究は、Oberman and Ramachandran(2005)が行った実験、およびその実験結果に基づいて提出した仮説(「壊れた鏡仮説」―ASD児は、TD児と異なって、自己が手を開閉する際にはμ減衰が生じるが、他者の手の開閉を観察する際にはそれが生ぜず、従って、ミラーニューロンシステムに機能不全が存するとする仮説)に関して、手の開閉という「自動詞的行為」ではなく、物をつかむなどの「他動詞的行為」の場合はどうなるかを調べてみようとするところに主眼がある。しかし、しかし、μ律動の減衰は、先行研究に見られるように、必ずしも明瞭ではない。現在パワー値による評価に加えて、ウェーブレット変換によるμ律動の時系列的な変化の分析を進めている。そのために、平成24年度内に開始する予定だった第2段階―ASD児(および健常成人)に「自動詞的行為」「他動詞的行為」のバイオロジカルモーションを見せ、その識別が可能かどうかを調べる実験の開始が遅れている。
ただし、「概要」①で述べたように、定型発達の幼児期の他者理解能力にミラーメカニズムがどのように関わっているかについての理論的考察は確実に進んでおり、次の「今後の方策」の項で述べるように、メンタライジング(心の理論)能力を視野に入れた考察へと展開しようとしている。
また、「概要」③で述べたように、「知識の呪い」と「心の理論」の関係を明らかにする研究を実施し、こちらのほうも論文投稿可能な段階まで進んでいる。ASDの主要な症状の一つが「心の理論」の欠如であることはよく知られている。その意味で、③の研究はASDという障害に対して、「壊れた鏡」仮説とは違った方向からアプローチを試みるものであり、これが、やがて①の理論的研究を媒介して②の研究と一つに統合されるよう、今年度以降の研究を進めて行く予定である。

今後の研究の推進方策

①μ律動の減衰についてパワー値による分析に加えてウェーブレット変換による時系列的な分析をさらに進める。それらの結果に基づいて、自動詞的行為と他動詞的行為によるμ律動の減衰のあり方及びAQ指数の高低との関係の分析を行う。
②同時に「研究の目的」に記した第2段階である、バイオロジカルモーション実験の実施に進む予定である。具体的には、特定の運動についての学習が、当の運動のバイオロジカルモーションの識別(知覚)にどのような効果を及ぼすか―特に「自動詞的行為」と「他動詞的行為」とでは、効果にどのような違いが生じるかを、健常成人、ASD児の双方で調べてみることを予定している。運動学習が、運動の識別(知覚)能力にどのような効果を及ぼすか(特に「自動詞的行為」と「他動詞的行為」とでどのような違いがあるか)を確かめることにより、人間のミラーニューロンシステムの機能についての知見を深めることが目的である。
③人間の他者理解のあり方として、ミラーリングとともに注目されているのは、メンタライジングの能力である。そこで、本研究の理論的基盤をさらに深め、確かなものとするために、幼児の発達過程でミラーリング能力とメンタライジング能力がどのような関係にあるかをレビューし考察する論文を構想している。
④「心の理論」についての実験的研究をさらに先に進めることを計画している。具体的には、視覚的視点取得が誤信念理解とどのような関係にあるのかを、「視覚的視点取得課題」と「誤信念課題」とをワン・パッケージで組み合わせることによって確かめることを計画している。ASD児は、視覚的視点取得、殊にその「レベル2」の能力に障害を持つことが示唆されている。もし「視覚的視点取得レベル2」が「心の理論」の一種であることが明らかになれば、ASDと「心の理論」との関係について、さらに新たな知見が得られることが期待される。

次年度の研究費の使用計画

①上に述べた、μ律動実験の実施のための費用―実験補助者、実験参加者、実験協力施設等への謝礼、実験に必要な消耗品費等 ②上に述べたバイオロジカルモーション実験のための費用―実験補助者、実験参加者者、実験協力施設等への謝礼等 ③上に述べた「心の理論」及び「視覚的視点取得レベル2」課題の実験のための費用―実験補助者、実験参加者、実験協力施設等への謝礼等 ④盛岡在住の研究分担者諸冨隆が作新学院大学(宇都宮)を来訪し、打ち合わせを行うための旅費 ⑤諸冨との打ち合わせのために研究代表者等が盛岡に出張するための旅費 ⑥学会参加のための旅費 ⑦その他、研究に必要な打ち合わせ等のための費用 ⑧その他雑費

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2013

すべて 雑誌論文 (1件) 学会発表 (1件)

  • [雑誌論文] 健常男子大学生の随意運動遂行時および動作観察時における脳活動ーEEGのMuリズムを指標としてー2013

    • 著者名/発表者名
      杉野信太郎・松本秀彦・田中見太郎・諸冨隆
    • 雑誌名

      生理心理学と精神生理学

      巻: 31

  • [学会発表] 健常男子大学生の随意運動遂行時および動作観察時における脳活動ーEEGのMuリズムを指標としてー2013

    • 著者名/発表者名
      杉野信太郎・松本秀彦・田中見太郎・諸冨隆
    • 学会等名
      第31回日本生理心理学会大会
    • 発表場所
      福井大学教育地域科学部
    • 年月日
      20130518-20130518

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公開日: 2014-07-24  

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