研究課題/領域番号 |
24531265
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 大東文化大学 |
研究代表者 |
齋藤 友介 大東文化大学, 文学部, 教授 (50297082)
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研究分担者 |
河野 淳 東京医科大学, 医学部, 教授 (00224808)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 人工内耳 / 学齢期 / 学力 / 機能的アウトカム / 統合教育 |
研究概要 |
地域の小・中学校に学籍をおき、通常学級にて統合教育を受ける人工内耳装用児が増加する現状を踏まえつつ、本研究では、今日まで本邦では検討が行われていない、健聴児との学力の乖離がより深刻になると推察される、義務教育後半期(小4から中3)にある人工内耳装用児の「1.学力とその関連要因」、ならびに「2.授業や学級活動への参加(機能的アウトカム)と学力との関係」、これら2点の検討を通して、学齢人工内耳装用児に固有の教育的ニーズの解明を目的に定めた。 平成24年度には上記の目的を達成すべく、具体的には、以下に挙げる3つの作業を行った。 (1)本邦における学齢人工内耳装用児の機能的アウトカムの測定に供する尺度開発に先立ち、既に欧米諸外国で使用されている、児童・生徒自らが回答する評価尺度を文献的検索し、既存の尺度の内容ならびに心理計量学的特性(信頼性と妥当性)を吟味した。 (2)Antiaら(2007)の学級参加尺度("Classroom Participation Questionnaire; CPQ")を邦訳のうえ、同意が得られた聴覚障害者(81人)を対象に質問紙調査を実施し、本評価尺度の信頼性と妥当性を確認した。 (3)上記の(1)(2)を踏まえつつ、平成24年12月から平成25年3月には、実際に来院した学齢人工内耳装用児のうち30人を対象に、面接調査により(a)機能的アウトカムと(b)学力(国語)、(c)学習コンピテンス(桜井,1992)(d)生活の質に関するデータを採取した。現在までの分析の結果、機能的アウトカムと学習コンピテンス、生活の質との関連性を確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は面接調査に先立つ準備作業として、81人の聴覚障害者の協力を経て、本邦の学齢人工内耳装用児の機能的アウトカムの測定に供する心理尺度を開発した。この作業を遂行するために当初の予想よりもやや長い時間を要したため、学齢人工内耳装用児の面接調査の開始が予定よりも4か月程度遅れた。しかしながら、学齢人工内耳装用児の多くが来院する冬休みと春休みの時期に集中的に面接調査を行ったため、30人の児童・生徒における(a)機能的アウトカムならびに(b)学力(国語)、(c)学習コンピテンス、(d)生活の質に関するデータを採取することができた。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度(2年目)は、学齢人工内耳装用児の多くが来院する夏休み(7月と8月)において、計60人の児童・生徒のデータ採取を目標に、面接調査により(a)機能的アウトカムならびに(b)学力(国語)、(c)学習コンピテンス、(d)生活の質に関するデータ採取を継続する予定である。加えて、機能的アウトカムや学力と関連を有する聴能学的要因(手術時期、聴力など)を検討する。さらに概ね5人程度の中学生に対して、面接による半構造化インタビューを行い、人工内耳装用児の機能的アウトカム(授業理解や学級活動への参加)についての、より詳細な質的情報を得ることを考えている。その他、保護者により同意が得られた児童・生徒の担任教師に対する質問紙調査を実施し、教師が評価した人工内耳装用児の機能的アウトカムと学力に関するデータ採取を計画している。
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次年度の研究費の使用計画 |
面接調査を補助する研究協力者(言語聴覚士および医師)への謝金、国際学会参加・発表のための旅費、ならびに研究成果の公開用のホーム・ページ作成等のための研究費の使用を計画している。
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