研究課題/領域番号 |
24540061
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
本多 宣博 東北大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (60311809)
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キーワード | ツイスター空間 / 自己双対計量 / 代数次元 |
研究概要 |
以下の3つの研究を行った。 1. 複素射影直線上のアファイン直線束上のスカラー平坦なケーラー計量について研究を行い、アファイン直線束の次数(直線束の次数の自然な一般化として定義される)が負の時はいつでもALEスカラー平坦ケーラー計量が存在することを示した。証明は、次数が負の直線束上に定義される自然なスカラー平坦ケーラー計量(いわゆるLeBrun計量)を、計量と複素構造混みで変形させることにより得られる。その際にツイスター空間に複素構造の変形理論を適用する。 2. 以前から行っている研究の自然な延長として、単純な構造をもったある有理多様体上の二重被覆の構造を持つツイスター空間の研究を行い、その詳細な構造(特に分岐因子の定義方程式)を決定した。証明の鍵となったのは、多重半反標準形に関する可約元の存在を示すことであった。 3. 5つ以上の複素射影平面の連結和に対し、その上のツイスター空間の代数次元について研究を行い、基本系の次元が1の時にはツイスター空間の代数次元は2にはなり得ないことを示した。この問題は見かけよりも微妙な問題であり、証明の詳細は検討中である。証明の基本方針は、多重半反標準形の固定点集合でツイスター空間をブローアップして、その上で交点数を計算し、固定点集合(曲線)を次々と引っ張り出すというものであり、オーソドックスな方法である。一方で、この証明からは、コンパクト複素多様対の代数次元に関する一般的な評価式が成立するとは限らないことが示唆されるため、慎重に検討する必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「研究実績の概要」の1に記載した内容は、共同研究者のJeff Viaclovskyによる問い(IMRN, to appear)に答えるものであり、満足のいく結果と言える。「研究実績の概要」の2に記載した内容は、本研究課題における主要な目標の一つであった。これが解決できたことにより、10年来の研究に一区切りが付いた。また、「研究実績の概要」の3に記載した内容は、研究計画の段階ではまったく見通しの立たなかった内容であった。
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今後の研究の推進方策 |
「研究実績の概要」の3に記載した内容(すなわち基本系がpencilとなっているツイスター空間の代数次元)は見かけよりも微妙な問題である。この結果はすでに論文の形にまとめてあるが、証明に不備がないか、来年度の早い段階ではっきりさせる必要がある。また、「研究実績の概要」の2に記載した内容は、まだ論文の形にまとめていないので、それも次年度に行う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初は主に論文作成のために用いる計算機を購入する予定であったが、処理速度の面で当初予想していたよりも高速化がなされず、購入を見送ったため。 次年度使用額はほぼすべて来年度に計画している国際研究集会において外国人2名を招聘するために使用する予定である。
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