研究実績の概要 |
本研究の目的は、位相空間の研究に用いられてきたホモトピー論の種々の概念および手法を微分空間の圏に拡張し,その応用を図ることであり,とくにホモトピーの概念に基づく一連の不変量(ホモトピー不変量)と,ド・ラムカルキュラスを用いて定義される不変量との関係を明かにし,それら二つの視点を融合した新たな手法を開発して,その有用性を明かにすることを目指した。 平成24年度から25年度にかけて,吉田耕平および原口忠之と共同研究を行い,以下の結果を得た。 (1) 微分空間の圏Diffは自然なモデル圏構造をもつ。(2)自然な関手 T: Diff → Top および D: Top → Diffからなる関手対が存在し,Diffのモデル構造と位相空間の圏Top の標準的なモデル構造との間のQuillen随伴対を定める。(3)自然な射TD(X) → Xが同形であるような微分空間ならなるDiffの充満部分圏をNGで表すとき,随伴対 (T,D) によりNGはΔ生成位相空間からなるTop の充満部分圏と随伴同値である。さらに,の事実から,NGはTop とQuillen同値であることが従う。(4)双変関手 NG × NG → NG が一般コホモロジー理論を定義するための条件をNGのモデル構造を用いて与えられる。(5)de Rhamコホモロジーに関するMayer-Vietoris完全系列が存在するための十分条件を1の分割を用いて定式化し,とくにsubcartesian空間に対して,Mayer-Vietoris 完全系列が存在することを示した。 平成26年度は,原口忠之と共同で微分空間の圏のモデル構造に関する研究を展開し,上記2で構成した Quillen随伴対が微分空間のモデル圏と位相空間のモデル圏の間のQuillen同値を導くことを示した。これは二つの圏のホモトピー論が本質的に一致することを示す重要な結果である。
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