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2012 年度 実施状況報告書

退化した微分作用素に対する確率微分幾何の新展開

研究課題

研究課題/領域番号 24540178
研究種目

基盤研究(C)

研究機関九州大学

研究代表者

谷口 説男  九州大学, 数理(科)学研究科(研究院), 教授 (70155208)

研究期間 (年度) 2012-04-01 – 2015-03-31
キーワードCR-多様体 / CR-ブラウン運動 / 熱核 / 確率微分幾何 / Malliavin解析
研究概要

CR多様体上のKohn-Rossiサブラプラシアンの実部(CR-サブラプラシアンと称す.)に付随する拡散過程であるCR-ブラウン運動の大域幾何学的構成について研究を行った.既に得ていた強擬凸CR-多様体上のレヴィ計量から定まるTanaka-Webster複素曲率の局所的な複素表示を利用したCR-ブラウン運動の局所的な構成方法を見直し,大域的なアプローチの展開を図った.研究協力者の松本裕行氏(青山学院大学)を訪問しての研究討論を通じ,大域的アプローチを行うための,Tanaka-Webster複素曲率に関連するユニタリ枠束に関する知見を得,準備的考察が整えた.
また,大域的なアプローチへの書き換えが必要とはなるが,局所表現を用いて,本年度の目的であったCR-サブラプラシアンに付随する熱核の対角線上における短時間漸近展開について研究を進めた.CR-多様体のHeisenberg群を基とする局所座標によるTanaka-Webster複素曲率の表現を利用することにより,漸近展開に現れる係数項がTanaka-Webster複素曲率の微分を含む多項式として表現できることを見出した.
さらに,研究目的には挙げていなかったが,CR-サブラプラシアンに対するDirichlet問題の境界点のCR-ブラウン運動に関する正則性が,境界の滑らかさを仮定すれば,アウターノーマルベクトルに関する簡単な仮定から従うことも見出した.これにより,Dirichlet問題に関するCR-ブラウン運動を用いた解の確率解析的表示も得た.
これらの成果は,CR-ブラウン運動の大域幾何学的な構成を達成した後に,論文としてまとめ公表する.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

大域幾何学的なCR-ブラウン運動の構成については当初予定より遅れているが,準備的考察の整備はできた.
すでにハイゼンベルグ座標(CR-多様体のHeisenberg群を基にする局所座標)を利用した局所表現に基づくCR-サブラプラシアンに対する熱核の対角線上での短時間漸近挙動に対する成果を得ており,これに基づく大域幾何的な再表現を行うだけの段階に達している.
CR-サブラプラシアンに対するDirichlet問題に対する,当初は想定していなかった,新しい知見を得ている.

今後の研究の推進方策

1.CR-ブラウン運動の大域的な構成方法の完成を図る.
2.CR-多様体の複素ベクトル束上へのCR-ブラウン運動の持ち上げの挙動を解析することにより,とくに距離関数との合成により得られる1次元確率過程の挙動の解析を通じて,CR-ブラウン運動の爆発問題,再帰問題のCR-幾何学的特性量による特徴づけを行う.
3.熱核の対角線外での短時間極限挙動を,CR-多様体のコントロール距離の言葉で与えるVaradhan型極限定理の研究に着手する.CR-サブラプラシアンに付随するコントロール距離に関する最短経路(測地線)を用いたWiener空間での平行移動を用いたGirsanov変換を利用して,まず,熱核をCR-サブラプラシアンに対するEuler方程式に由来する古典的作用積分により制御される部分と,既に研究を進めている対角線成分に分解する表示式を証明する.その後,Wiener超汎関数の漸近転仮理論を援用して,Varadhan 型の極限定理を導出する.極限定理の導出には,さらに,Kusuoka-Stroock による一般のサブラプラシアンに対する大偏差原理と,複素バンドル束へのCR-ブラウン運動の持ち上げに関連する確率振動積分に対するWiener空間上の複素変数変換理論(研究代表者とP.Malliavinにより確立された)も援用する.

次年度の研究費の使用計画

昨年度使用できなかった経費は,研究討論のための研究協力者松本への訪問が,日程調整の関係で1回少なくなったことによる.本年度は,1回多く訪問を実施し,大域的なCR-ブラウン運動の構成について検討することで,昨年度経費からの来るこした経費を使用する.他は,当初予定通りに執行する.

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公開日: 2014-07-24  

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