研究概要 |
原著論文に関しては,(i) T. Tanizawa, S. Havlin, and H. E. Stanley: Physical Review E, Vol. 85, 046109 (2012) では,正相関の強いネットワークの選択的ノード除去に対する頑強性ついての方程式を導き,従来,スケール・フリー・ネットワークの弱点と言われてきた選択的ノード除去に対する脆弱性を著しく改善する強次数相関ネットワーク構造を理論的に導くことに初めて成功した。次に,(ii) T. Nakamura and T. Tanizawa: Physica A, Vol. 391, pp. 4704-4710 (2012) では,一般的な時系列データをネットワークとして表現する全く新しい方法を提案した。このことにより広範な時系列データを複雑ネットワークとして表現した上で考察することが可能となり,複雑ネットワーク理論の適用範囲が拡がった。(iii) D. M. Walker, A. Tordesillas, T. Nakamura, and T. Tanizawa: Physical Review E, Vol. 87, 032203 (2013) は前述の論文(ii)の方法をレオロジーに応用したもので,その方法の有効性が示されている。これらの成果は研究実施計画第1年度に記載されている正相関を持つ複雑ネットワークの理論的考察から生まれたものである。最後に,(iv) T. Tanizawa: NOLTA, IEICE, Vol. 4, pp. 138-147 (2013) では,当初の研究実施計画第2年度にある負相関を持つ複雑ネットワークを考察したもので,ネットワーク上の拡散現象に注目し負相関を持つネットワークが情報拡散に関しては有利であることを示したものである。その他に国際会議等での6件の発表がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画では初年度(平成24年度)に正の次数相関を持つネットワークの理論構築を行う予定であったが,それについては年度前半に原著論文(i)Physical Review E, Vol. 85, 046109 (2012)によってある程度満足のできる結果を得ることができた。また,その研究過程で時系列データを複雑ネットワークによって視覚化する新しい方法を開発するという派生的な成果も得られた。(原著論文(ii)Physica A, Vol. 391, pp. 4704-4710 (2012))この成果はそれ自身新しい研究分野を創成する可能性を持つ重要な課題であると捉えている。また,年度後半では本来は第2年度(平成25年度)の研究計画であった負の次数相関を持つネットワークの持つ重要な性質についても考察し成果を得ることができた。(原著論文(iv)Nonlinear Thoery and Its Applications, IEICE, Vol. 4, no. 2, pp. 138-147 (2013) )これらの成果により,第2年度は正負の次数相関について当初の予定より深い考察が可能となった。 以上の理由から,現在のところ,研究計画は概ね順調に進展していると考えられる。
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