研究課題/領域番号 |
24540480
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 東北工業大学 |
研究代表者 |
中川 朋子 東北工業大学, 工学部, 教授 (40222161)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ウェイク / 太陽風 / イオン / 電場 / 加速 / 熱速度 / かぐや / MAP/LMAG |
研究概要 |
月のように誘電体で構成され固有磁場を持たない障害物に太陽風が吹きつけた場合、プラズマのほとんどが表面で吸着され、下流にはウェイクと呼ばれるプラズマ密度の薄い領域ができる。近年の月周回衛星観測によってウェイク中でも月にごく近い場所でイオンが検出され、ウェイクへのイオンの侵入過程に注目が集まっていた。ウェイクへのイオンの侵入を考える際には、真空中へのプラズマ流入の理論、特に電気的中性を仮定した自己相似解が良く使われてきたが、この理論ではイオンの侵入限界であるion frontは形成されず、近距離へのイオンの侵入を扱うには適切ではなかった。本研究では、電気的中性を仮定しない2次元粒子シミュレーションを用い、太陽風速度・電子熱速度・プロトン熱速度を変えて数値実験を行うことによって、ウェイク中の負の電位によるプロトンの加速が、太陽風の遅い場合には十分時間をかけて行われるため、プロトンは障害物から近い距離でウェイク中心に向かう速度を持ち、真空領域を早く埋めることを示した。観測的には、月近傍でのイオンの検出は太陽風速度が遅いときに起こると予想される。 一方、かぐや衛星による月周辺のプラズマ観測では、ごく一部の太陽風プロトンが月面で反射され、太陽風磁場に捉えられて夜側ウェイク中に回り込んでくることが知られていたが、この粒子がたてたと思われる0.1-10Hzの波がかぐや衛星搭載磁力計MAP/LMAGによって発見された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
天体のスケールに対しデバイ長が小さい場合のシミュレーションは順調に進行している。夜側ウェイク中に回り込んだイオンの立てる波の発見は予想外の成果であり、この解析を、2次元シミュレーションへの光電子の導入に優先している。
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今後の研究の推進方策 |
当初予定通り、デバイ長と天体半径の比をさらに62倍とした実験を進め、電場構造に対するスケール比の影響(帯電の影響が相対的に小さくなるか)を調査するとともに、得られた電場構造が、かぐや衛星によって観測された夜側電位構造や、極域における電子密度の上昇を矛盾なく説明できるかを調べる。 これと並行して、これまでのシミュレーションに入れていなかった光電子の効果を入れるためのコード開発に着手する。昼側月面からの光電子は昼夜境界の電場を強める方向にあり、現状を根本的に変える効果は無いと予想している。現在計算領域の端から注入している太陽風粒子とは別に、月面から電子を注入できるようにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
他の外部資金を頂くことができたため旅費の支出を低く抑えることができた。円高が進行し海外論文誌の出版費が上がってきていることを鑑み、論文出版費と成果発表旅費に申請時の予定よりも経費がかかる見込みである。
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