研究課題/領域番号 |
24540480
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研究機関 | 東北工業大学 |
研究代表者 |
中川 朋子 東北工業大学, 工学部, 教授 (40222161)
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キーワード | 月 / ウェイク / 太陽風 / 帯電 / デバイ長 / イオン / かぐや / PICシミュレーション |
研究概要 |
ウェイクへの太陽風プラズマ進入を考える際には、従来、真空へのプラズマ流入の理論や計算機実験が使われることが多かった。質量の小さい電子がウェイク中に入って電子の圧力勾配と電場がつりあう形を作り、その電場とイオンの圧力勾配によってイオンが加速されながらウェイクに入っていくという描像である。しかし太陽風中のウェイクの場合は、電子の熱速度が太陽風速より大きいため、障害物の下流側が選択的に負に帯電することを考慮する必要がある。帯電による電場はデバイ長の範囲内に限定されるためデバイ長に対して大きな天体の場合は帯電を無視できると考えがちであるが、ウェイク中は電子の密度が非常に下がっており、上流の太陽風中のデバイ長に比べはるかに長い距離まで帯電による電場の影響が及んでいる。本課題では、太陽風中の障害物の大きさを変えて2次元粒子コードで帯電を入れたシミュレーションを行い、太陽風中の障害物の下流のウェイク中では、低密度のため、デバイ長が障害物半径程度まで大きくなり、帯電の影響が無視できないことを示した。 また、かぐや衛星によって月面の真裏で観測された0.1-10Hzの磁場変動について、そのすべてが月面で反射した太陽風プロトンのラーマー運動による回り込み(タイプIIエントリープロトン)と同期していることが確認された。その多くは電子の流入がある場合に観測されており、この波の生成機構としては、イオンと電子の運動の違いによる変形二流体不安定が有力であることが分かってきた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
天体のスケールに対しデバイ長が小さい場合のシミュレーションはおおむね予定したスケールまで計算することができた。現在の計算能力の限界に近づき、かつ、現実的な太陽風速度まで到達しているが、さらにもう一段の計算を試みている。 夜側ウェイク中に回り込んだイオンの立てる波の発生機構の解析は、かぐや衛星搭載MAP-PACEによる粒子観測を用いることによって進捗を見せている。
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今後の研究の推進方策 |
天体のスケールに対しデバイ長が小さい場合の粒子シミュレーションをさらに進めつつ、近年、外国の衛星観測から、太陽風磁場の方向によってウェイクへの太陽風プラズマの侵入の度合いが変わることが報告されているので、太陽風磁場の強度を弱め磁場方向を変えた計算を行い、太陽風プラズマの侵入の度合いの違いを検証する。 夜側ウェイク中に回り込んだイオンの立てる波の発生機構の解析は、かぐや衛星の月面側と反月面側の粒子観測の統合版データの提供を受けてさらに仮説を検定量的に証する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
物品費を低く抑えることができたこと、プリンタの購入を間接経費から支出したこと、および、H25年度の出版予定であったタイプIIイオンの立てる波の論文の投稿が年度をまたいだため年度中の支払いがなかったことから、H25年度中の支出が抑えられたものである。 論文出版がH26年度中となり、また、海外の学会における招待公演が増えたことから、成果公開のための出版費及び旅費が増える予定である。
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