研究実績の概要 |
腫瘍細胞マーカーであるTF二糖構造(Gal-beta 1,3-GalNAc)に対し選択的認識挙動を示すデバイス分子の設計と合成を行った。そして、デバイス分子を含む薬物担体リポソームと腫瘍細胞に見立てた標的リポソーム間の融合挙動の評価を通じて合成したデバイス分子のTF二糖構造選択性を検討した。膜融合の定性的評価は動的光散乱測定によるリポソーム粒径変化と蛍光測定によるリポソーム構成脂質の混合挙動の評価などにより行った。標的細胞を見立てたリポソームにはTF二糖と同じ糖鎖配列を有するガングリオシドGM1をはじめ対照として種々の糖脂質を含有させ、膜融合挙動を比較した。その結果、本研究において設計・合成したデバイス分子はTF二糖配列を有するGM1に対し特異的な膜融合挙動を示した。また、リポソーム界面でのデバイス分子の標的認識に関する定量的評価を行うために水晶発振マイクロバランス(QCM)測定を行った。水晶振動子上に標的リポソームを結合させ、担体リポソームをフローさせることによる振動数変化を測定することが可能となる。種々の条件においてQCM測定を行った結果、本研究課題で設計・合成したレセプターはTF二糖を高い選択性で認識することが示された。なお、TF二糖の構成単糖に対しては十分な認識能を有さないこともQCM測定により明らかになった。これらの結果は、われわれの設計・合成した新規レセプターが腫瘍細胞を標的とする薬物担体の設計に大きく貢献できることを示している。
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