研究課題/領域番号 |
24570093
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
吉澤 和徳 北海道大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (10322843)
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キーワード | メキシコ / チャタテムシ / 系統進化 / 生物地理 / 分類 |
研究概要 |
昨年度までに蓄積された標本に基づき,ムツテンチャタテ属 Trichadenotecnum の分子系統解析および分類学的研究を進めた.分子系統解析に関しては,旧世界のサンプルの解析をほぼ終え,良好な結果が得られている.また北米のサンプルも一部解析を行い,新世界で多様化しているムツテンチャタテが,旧世界の単一祖先に由来する事が示唆された. ムツテンチャタテ属の分類学的研究も進め,マレーシア産本属4新種を含む20種の分類学的再検討論文を投稿した.台湾,タイの本属の分類学的研究も進めた. ムツテンチャタテの分岐年代を明らかにする上で,化石記録のあるより広い分類群を含めた系統解析が必須となる.ムツテンチャタテ属とはやや遠縁ではあるが,同じチャタテ亜目で多様化をとげたケチャタテ下目の高次系統解析も行い,論文がアクセプトされた.ムツテンチャタテ属が属するチャタテ亜目全科の高次系統解析も行い,論文がアクセプトされた.このテーマに関しは,9月に Dresden Meeting on Insect Phylogeny で招待講演を行った.また,年代推定に必須となる,化石チャタテムシの分類学的位置づけの再検討も行った. 関連テーマとして,ムツテンチャタテ属と同様に,新世界と旧世界で隔離した分布を示すホラアナチャタテ科 Prionoglarididae の系統学的,生物地理学的研究を進めた.その過程で,一部のグループの雌にペニス様の交尾器が見られる事が明らかとなったため,この研究も行い,論文がアクセプトされた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していたメキシコ調査は26年度に延期されたが,これは24年度の報告ですでに記載している. 分類学的研究は,当初マレーシアおよび台湾の研究の本年度中の完了を予定していたが,台湾の研究に関しては若干の遅れが生じている.これは,8月に台湾を訪問する機会があり,その際に共同研究者から大量の標本の貸与を受け,扱う種が当初予定から大幅に増えたためである. ムツテンチャタテ属の分子系統解析は,当初予定通り進展している.より包括的な分類群(チャタテ亜目)を対象とした分子系統解析は,当初計画以上の進展が見られ,本年度中に論文が受理された.
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今後の研究の推進方策 |
6月22日から7月5日でメキシコの回目のフィールド調査を予定している.24年度に未調査の地域を対象とし,ムツテンチャタテ属の収集を行う.収集されたサンプルの分類学的,分子系統学的解析を進め,研究を完了する. 台湾,タイのムツテンチャタテ属の分類学的再検討も,可能な限り早く完了させる.
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次年度の研究費の使用計画 |
24年度終了時に報告した通り,当初25年度に予定していたメキシコでのサンプリングを26年度に延期した.そのための旅費およびそこで得られたサンプルの解析のための資金が次年度繰り越しとなった. 6月末から7月頭でのメキシコのサンプリングおよびそこで得られたサンプル解析のために用いる.
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