研究課題/領域番号 |
24570191
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
藤田 英明 独立行政法人理化学研究所, 生命システム研究センター, 客員研究員 (50318804)
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キーワード | エピジェネティクス / 一分子観察 / ヒストン / 分化 |
研究概要 |
ヒストンのアセチル化を捉えることが出来るプローブHistacを1分子観察に適合させるため、蛍光ドナー側をphoto activatable GFP (PAGFP)に、アクセプター側を様々な色素に対応させるためにSNAP tagを付与したコンストラクトを作製した。Histacは理化学研究所の佐々木和樹博士が開発したFRETプローブであり、アセチル化したヒストンに結合するブロモドメインとHiston H4複合体が蛍光色素VenusとCFPで挟まれた構造をしている。このHistacを蛍光一分子観察に対応させるため、Venusを光誘起性のPAGFPに、CFPをSNAP tagに置き換えた。この遺伝子を発現させた細胞に外部からSNAPタグに結合する赤色蛍光色素を導入しPAGFPを誘起したところ、青色励起によって細胞核から赤色の蛍光を観察した。アクセプターを退色させるとPAGFPの蛍光が増加したことから、蛍光エネルギー移動が起きていることが確認された。非常に弱くPAGFPを誘起し青色励起光で観察したところ、緑色の蛍光を発する輝点と赤色の蛍光を発する輝点の双方が観察された。すなわち、緑色の蛍光を発する輝点は蛍光エネルギー移動が起きておらずヒストンがアセチル化されている部位、赤色の蛍光を発する輝点は蛍光エネルギー移動が起きていてヒストンがアセチル化されていない部位と考えられる。現在はモデル細胞であるHeLaを使い、また、固定細胞を使って観察を行っているが、今後はESを用い、生細胞で観察を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Histacを用いることにより、ヒストンのアセチル化を一分子で観察することに成功した。現在は実験の容易さからモデル細胞を用いており、観察も細胞を固定後に行っているがエピジェネティカルな変化のダイナミクスを見るためには生細胞観察が必須である。現在、作製したプローブを恒常的に発現するES細胞を準備中であり、準備でき次第生細胞観察を行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
現在、レンチウイルスを用いてES細胞に恒常的にプローブを発現させるべく実験を行っているが、培養を続けるとプローブがサイレンシングされてしまうといった問題がある。これについては今後、導入方法を変える(Piggy bacシステムの使用など)ことで対処する。 ヒストンのアセチル化だけでは真にエピジェネティカルな変化を見たとは言いがたい。そのため、ヒストンのメチル化を可視化することも検討中である。
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次年度の研究費の使用計画 |
購入試薬の多くをキャンペーン価格として安く購入できたため。 来年度は消費税増税とそれに伴う商品の値上げにより、支出の拡大が想定される。
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