我々は消化管粘膜の健全性に植物性リン脂質やその消化物が貢献している可能性を調べている。ヒト胃由来培養細胞株を用いた解析より、リゾホスファチジン酸(LPA)はある種のムチン蛋白の転写とプロスタグランジンE2の産生を促進し、ムチンを含む粒子の分泌を誘導していることが明らかになった。これらはいずれも胃における防御因子である。また、キャベツ脂質に見出されていたフィトセラミド-1-リン酸にも小胞分泌作用があった。これらのリン脂質は肉類にはほとんど含まれず、アブラナ科野菜に多く存在するリン脂質である。アブラナ科野菜の抗胃腸障害効果にはこれらのリン脂質の作用が関与しているのかもしれない。
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