北海道の地域労働市場把握は、農業労働力需要が増加傾向にあり、1戸当たり平均雇用人数は常雇3.8人、臨時雇延べ137人である。調査事例の大規模水田作経営では、通年雇用する従業員、期間従業員といった人材は直接雇用し、単なる労働のスポット確保は派遣社員に分けている。派遣労働者雇用の費用は直接雇用に比べて時間当たり3割程度高いが、募集、冬期の雇用調整、事務等のコストを勘案し利用している。 人材派遣による農業支援は、専業、地元建設業等と兼業する派遣事業者があり、農業を含む派遣社員は全道で4.5千人、平均44歳、勤続年数6年、所定内月給17万円である。農業関係の派遣社員は農業経験者が多いが、若い未経験者も増え農作業スキルの指導が必要となっている。毎年依頼する経営に対しては、依頼者の要望で経験者を継続的に派遣しており、農業技術習得の機会にもつながり得るが、農場管理スキル形成に結びついていない。 本年度は、就業条件の改善のポイント解明に向けて、改善手法としてHerzbergの動機づけ・衛生理論を援用して考案した農業法人の直接雇用向けの職務満足度計測手法の整備に取り組んだ。派遣労働者の思い描くキャリア発達の実現は、仕事に対する長期的な満足感の維持、個人の価値観に合致する成長可能性の機会提供が必要であり、参入ルートとして作業技術、経営のスキルを習得し、就職就農や自営就農への階梯を経ることが重要と考えられる。その際、農業キャリアの形成条件として、手取り賃金はほぼ地域別最低賃金で、経験による加算でも1割増し程度であり、不安定就業者として再生産されるのみか、スキル習得と継続就業を農業界として提供できるかが課題となる。
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