研究課題/領域番号 |
24580359
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研究機関 | 宮城大学 |
研究代表者 |
千葉 克己 宮城大学, 食産業学部, 准教授 (00352518)
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キーワード | 塩害対策 / 東日本大震災 / 農地復旧 / モニタリング / 地下水 / 塩分濃度 |
研究概要 |
農地の塩害は,津波や高潮などによる海水の浸水で発生する場合と海水が混入した地下水が上昇して発生する場合がある。宮城県沿岸部は,東北地方太平洋沖地震によって地盤が沈下したため,これら両者の塩害を受けている農地がある。今後,こうした農地において確実な除塩対策を進め,農業再開後の塩害再発を防止していくためには,より高度な塩害対策技術と地下水の上昇を制御する手法を確立する必要がある。本研究は,こうした農地向けの塩害対策技術の確立と塩害再発の防止を目的とし,地下水の動態などのモニタリングを行った。 調査圃場は,未復旧で塩分濃度が高い宮城県岩沼市,石巻市,東松島市の津波被災農地と山元町の復旧済み津波被災農地とした。山元町の圃場では除塩対策後に塩害が再発している。 モニタリングの結果,石巻,東松島の圃場は,地下水のECが10~30dS/mで降雨により地下水位が田面まで上昇しており,津波と地下水両方の塩害を受けていると考えられた。一方,岩沼の圃場は,昨年度は津波と地下水両方の塩害を受けていたが,今年度は地下水位が田面下50cm程度に維持され,土壌のECが低下したことが認められた。排水施設が復旧し,排水機場の適切な稼働により,地下水位の上昇を抑えたため,雨水によって除塩が進んだと考えられる。また,山元の圃場において塩害が再発した原因はECの高い地下水位が上昇したためであることがわかった。 今後の新たな塩害対策は,岩沼の圃場の例を参考に,地下水動態のモニタリングを行いながら地下水位の上昇を抑える排水機場の運用法を地区ごとに明らかにすることが有効である。また,塩害の再発の防止には暗渠などの整備により圃場の排水性向上を図ることが必要と考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度の岩沼市の圃場と同様に,石巻市と東松島市の沿岸において津波と地下水両方の塩害を受けている圃場が確認できたこと,またそれらの地下水動態が把握できたことは貴重であった。そして昨年度,除塩対策が難しいと考えられた岩沼市の圃場において,地下水位を調整することで除塩が進み,復旧が可能になることが確認できたことは,今後の塩害対策を考えるうえで大きなヒントになった。地区ごとの排水機場の利用法のあり方が除塩対策のポイントになる。塩害が再発防止に排水改良が有効であることもわかった。 津波被災農地における地下水の電気伝導度,地下水位の動態のモニタリングを行うことで有益な情報をたくさん得ることができた。 以上のことから本研究はおおむね順調に進展していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度 平成25年度に続き宮城県石巻市、東松島市,岩沼市においてモニタリングを行う。石巻市,東松島市の圃場は現在仮復旧が行われており,今年6月までに稲の試験栽培が実施される。26年度は試験栽培中の地下水の動態を中心にモニタリングを行う。岩沼市の圃場は復旧し稲作が再開している。この圃場においてもモニタリングを継続し,復旧前との地下水環境の変化を把握しながら塩害の再発を防止する手法を考察したい。 現場で得られたモニタリング結果や考察を関係土地改良区や宮城県農林水産部などと検討し,地下水位の制御に有効な排水機場の利用法を明らかにし,昨年まで復旧が難しいと考えられていた沿岸部の津波被災農地の新たな塩害対策技術の確立を目指したい。
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