研究課題/領域番号 |
24580461
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
岩田 祐之 山口大学, 獣医学部, 教授 (40193750)
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研究分担者 |
渡邊 理恵 山口大学, 獣医学部, 准教授 (50435715)
前田 健 山口大学, 獣医学部, 教授 (90284273)
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キーワード | 急性期糖蛋白 / α1酸性糖蛋白 / モノクローナル抗体 / 糖鎖修飾 |
研究概要 |
難治性病態における急性期蛋白糖鎖修飾モデルのトランスレーショナル研究を目的に、動物α1酸性糖蛋白(AGP)について、本年度は(1)ELISAによるAGP定量系とLectin Assayによる定性系の確立、(2)糖鎖付加のAGP分泌パターンへの影響(AGPの哺乳動物細胞での組換え蛋白発現と糖鎖改変モデルの検討)を中心に実施した。 (1)ELISAによるAGP定量系とLectin Assayによる定性系の確立: ELISA定量系を確立するため、マウスAGPモノクローナル抗体のエピトープ解析を行ったところ、nativeなAGPを認識する抗体は#2H4および#30であり、アミノ酸配列150番目以降を認識し、近接するが、異なるエピトープを認識する可能性が示された。そこで、サンドイッチELISAによるマウス血清mAGP濃度を測定したところ、1.0-2.0μg/mlとなり、既報値(0.2-0.4mg/ml)と比べて低い値となり、nativeなAGPと組換え体の抗体へのaffinityの違いによるものと考えられた。また、SPR法による測定も試みており、特異結合が確認された。 (2)糖鎖付加のAGP分泌パターンへの影響:mAGPは5か所のN型糖鎖負荷部位(N25, N34, N76, N94, N104)を持ち、糖鎖付加がmAGPの細胞外分泌に関与していることが示唆されており、mAGPの糖鎖付加パターンとその細胞外分泌との関連を明らかにすることを目的として、各種糖鎖付加部位を欠失させたmutantを作製し、組換え蛋白発現を試みたところ、その細胞内産生量および細胞外分泌量に差がある可能性が示唆され、さらに検討を進めている。 その他として、AGPを産生する細胞株NMuLi cellをRT-PCR法により見出し、糖鎖修飾の改変や産生増強メカニズムの解明に有効であることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
AGPの分離精製とモノクローナル抗体の作製についてはほぼ順調に推移していたが、モノクローナル抗体については異なるエピトープを認識する抗体種が少なく、サンドイッチELISAによる定量系の確立に時間を要した。また、マウスAGP標準品として大腸菌組換え蛋白を用いたが、nativeなAGPとの親和性の違いが示唆され、定量系確立の問題となっている。哺乳動物細胞におけるマウスAGP発現において、糖鎖付加部位を欠失させたクローンを作製しているが、全てが蛋白発現に至っているわけではなく、今後の課題として挙げられる。キャピラリー電気泳動によるAGP検出の可能性について条件設定が滞っており、現在検討中である。
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今後の研究の推進方策 |
マウスAGPをモデルとして、定量系および糖鎖定性系の確立を試みているが、定量系については標準品として哺乳動物細胞発現組換え体を作出することで、より正確な血清AGP値が得られる可能性がある。また、biacoreを用いたSPR法による定量系開発についても、作製したモノクローナル抗体をsensor chipに固定したものを用いたところ、組換え体および血清で特異結合が認められており、定量系開発の可能性が示された。AGPの糖鎖修飾パターンの変動については、lectin ELISA法の開発の目処が立ち、capture法とWestern blotを組み合わせることで、lectin親和性パターンの変動を解析できる可能性も示されている。キャピラリー電気泳動については泳動バッファーpH条件変更することで、AGP検出の可能性があるものと推察される。
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次年度の研究費の使用計画 |
ELISA法の確立、糖鎖レクチン親和性の検出法の確立、およびキャピラリー電気泳動の条件設定に時間を要したため、次のステップに進むことができなかったことが主な要因となった。 マウスα1酸性糖蛋白(AGP)のELISA法による血清AGP測定、糖鎖レクチン親和性の検出、およびキャピラリー電気泳動を進めるとともに、糖鎖付加の意義、細菌感染でのみ上昇すると言われているプロカルシトニンとの比較、SPR法による測定の検討に使用する予定である。また、可能であればウシおよびネコ症例における血清AGP変動についても可能であれば検討する。
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