難治性病態における急性期糖蛋白修飾モデルのトランスレーショナル研究を目的に、次の事項について検討した。 (1)疾患モデル動物におけるAGP変動:急性炎症モデルとして、 ICRマウス雄8週齢にLPS 20μg/頭で投与し、48時間後の血中AGP濃度をsandwich ELISA法で測定したところ、 無処置群および PBS投与群はそれぞれ0.27μg/mlおよび0.31μg/mlであったのに対し、0.39μg/mlと有意に増加していた。シアル酸付加量推定のため、 SSA-ELISA法を行ったところ、無処置群およびPBS群のシアル酸比(それぞれ4.69および3.31)に有意差はなかったが、LPS群では0.71と有意に減少した。 (2)動物AGPに対するモノクローナル抗体のエピトープ解析:マウスAGPでは nativeなAGP を認識する抗体は #2H14、#30の2種であり、アミノ酸配列 150番目以降の異なるエピトープを認識することが示されている。ウシでは2種(#2A4、#2G3)は169-202 aaに存在するエピトープを認識し、2種(#2B5、#3C5)は20-64 aa、2種(#EC2、#FD5)は65-120 aaを認識する可能性が示され、ウシAGPを定量できるELISA系の確立に有用と考えられた。 (3)糖鎖付加のAGP分泌パターンへの影響:mAGPは5カ所のN型糖鎖付加部位部位を持ち、各欠失部位を持つmutantを作成してその蛋白発現を観察したところ、N25、N34もしくはN76を有するものはバンドがブロードになることから、この部位に複合糖鎖が付加している可能性が、一方、N94、N104は単純糖鎖が付加している可能性が示された。また、細胞外分泌されたmAGP は EndoH耐性であることから細胞外分泌には複合型糖鎖の付加が必要であることが示唆された。
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