研究課題/領域番号 |
24590093
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
松尾 美記 順天堂大学, 医学部, 助教 (70320322)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 黄色ブドウ球菌 / VISA / hVISA / ゲノムシークエンス / バンコマイシン耐性 / MRSA |
研究概要 |
バンコマイシンは数少ない抗MRSA薬の一つである。黄色ブドウ球菌のバンコマイシン耐性に関与する遺伝子を網羅的に同定する目的で、VISA(Vancomycin-intemediatae S. aureus)の前駆体であるhetero-VISA (hVISA)株からバンコマイシン選択により、46の VISA株を分離し、ゲノムシークエンシングを行った。親株との比較解析により、各耐性変異株のゲノム上には1から6の点変異が存在することを明らかにした。各株に見出されたこれらの点変異は、同じ遺伝子領域に位置するのではなく、総数48もの遺伝子の発現に影響するものであった。ゲノム上に点変異が1つだけ見出された32株に注目して、さらにmutation mapping解析を行った結果、15の新規耐性変異を同定した。この結果はhVISAからVISAへの変換には多様な遺伝的経路による耐性メカニズムがあることを示唆する。 hVISAは10の6乗に1つの頻度でVISAを生じる細胞集団である。しかし、これまでその遺伝的組成については明らかにされていなかった。本課題では、hVISAに内包されるVISAの遺伝的多様性を明らかにした。この知見は、一旦hVISAとなった黄色ブドウ球菌は、バンコマイシンに暴露されると、まだ我々の知らない多様な耐性メカニズムによって容易にVISAになることを示している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
バンコマイシン耐性に関与する遺伝子の網羅的解析は研究計画通りに遂行できている。結果は予想以上に多くの新規遺伝子変異が同定できており、進行状況は順調である。
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今後の研究の推進方策 |
申請時当初、二つの研究計画;①臨床分離株Mu50の細胞壁肥厚化・構造変化に関与する因子の同定、②in vitroで分離したVISA株を用いたバンコマイシン耐性に関与する遺伝子の網羅的解析、を同時に進めて行く予定であったが、24年度研究成果により、②について予想外に多くの新規遺伝子変異が同定できたので、これらの新規耐性機構の解明を主に進めて行く予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
新規耐性機構解明に向けて、耐性変異遺伝子の機能解析を、分子生物学的、生化学的手法により行う。そのための、オリゴヌクレオチド作製、抗体作製、試薬類、解析用ソフト等の購入に使用する。
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