研究課題/領域番号 |
24590170
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研究機関 | 科学警察研究所 |
研究代表者 |
金森 美江子 科学警察研究所, 法科学第三部, 主任研究官 (80356203)
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キーワード | 加熱脱着ガスクロマトグラフィー/質量分析 / 化学剤 / 分析化学 |
研究概要 |
昨年度の各捕集剤での化学剤破過容量の算出結果から、Tenax TA (170 mg) 充填ガラスチューブを作製・使用した。分析対象揮発性化学剤として、神経ガス6 種(サリン、ソマン、タブン、シクロヘキシルサリン、VX、RVX)及びマスタードガスを用いた。 加熱脱着温度やスプリット流量などの、加熱脱着ガスクロマトグラフィー/質量分析 (TD-GC/MS) 条件の最適化を行った。神経ガス及びマスタードガス混合溶液(溶媒 n-ヘキサン)1 μL を捕集チューブに滴下直後、窒素で一定時間パージしたものを標準試料とし、TD-GC/MS 測定へと進めた結果、いずれの化学剤も良好に検出することができた。このうち、特に揮発性の低い VX 及び RVX は、ピークのテーリングが大きい傾向が認められた。いずれの化学剤も検量線で良好な直線性を示し、再現よく検出することができ、検出限界(ベースピークの抽出イオンクロマトグラム S/N 比=3)は、VX、RVX が 1.3 及び 2.9 ng, それ以外の化学剤は 0.070-0.30 ng であった。 続いて、捕集チューブでの化学剤の安定性を検討した。Tenax TA チューブに化学剤 50 ng を添加、窒素パージ後密栓し、室温及び 4℃で一定期間保管後、TD-GC/MS 測定を行い、化学剤の経時変化を調べた。その結果、添加直後の化学剤検出を 100% とした場合、VX 及び RVX 以外の化学剤は、2 週間経過しても室温、4℃保存ともに 80% 以上検出された。VX 及び RVX は、保存期間が経過するにつれて検出率が低下し、特に室温保存の場合には、10 日で 30 % 以下の検出率となった。VX の場合、クロマトグラム上に未知化合物のピークが検出され、室温保管でそのピークの増加が顕著であったことから、VX は保存期間中に分解したと考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
育児休暇を取得後、育児短時間勤務、育児時間を取得しており、当初の予定よりも実験が進んでいないため。
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今後の研究の推進方策 |
湿度による捕集チューブでの化学剤の安定性について検討を行う。 化学剤を気化させたガス試料を調製し、捕集チューブに捕集吸着後、TD-GC/MS 測定を行い、標準試料(溶液滴下)の場合との比較検討を行う。次に、乾燥空気ガスを大気と想定し、一定濃度になるように化学剤含有ガス試料を調製した場合の検出限界、再現性、定量性についても検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
育児休暇や育児時間取得のため、当初の予定よりも実験が進まなかったため。 加熱脱着GC/MS用消耗品、湿度調整・ガス接続配管などの購入。学会発表やセミナー参加費・旅費。
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