研究概要 |
本年度はiPS細胞の再生医療への応用を視野に入れて、ヒトiPS細胞を骨格筋へ分化誘導する条件の検討を行った . (1) ウールリッヒ先天性筋ジストロフィー患者の線維芽細胞から誘導したiPS細胞株、6株を最近報告されたEZ-sphere形成法に従い(Hosoyama et al., Stem Cells Transl Med. 3:564-74, 2014)100ng/mlのbFGF, EGF存在下で6週間浮遊培養することにより、骨格筋へ分化誘導した。株によって誘導効率が違っていたが、多くのクローンが多核の筋管を形成したので、コラーゲンVIの欠損により筋分化が阻害されることは無いと思われた。細胞の増殖速度と骨格筋分化能には相関は無かった。Sphere形成期間を8週、10週と伸ばしたところ、最終的な筋分化効率は低下した。誘導した細胞の遺伝子発現を網羅的に調べたところ、MRF4, MYOD, SIX1, EYA4の発現が高く、PAX3, PAX7, Myf5の発現は低かった。SIX1/EYA4がMYODやMRF4と協調的に筋分化を促進していると考えられた。筋分化良好なsphereと不良のsphereの遺伝子発現を比較したところ、いくつか発現に差がある遺伝子が抽出され、これらの遺伝子がMYODの上流で働く可能性が示唆された。 (2) 特異的mRNAを生細胞で検出するCy3標識したnano-flare(J. Am. Chem. Soc, 129, 15477-79, 2007) を用いて、MYOD転写産物の検出を行い、筋分化に伴いMYODのシグナルが強くなることを確認した。筋分化のモニターリングに有用であると同時に、FACSによる細胞の純化に有用であると思われた。一方、市販されているCy5標識したPAX7に対するプローブでは非特異的シグナルが強く、注意を要すると考えられた。
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