研究課題
本年度は最終年度であり、マウスへの異種移植系を用いてヒトiPS細胞から誘導した骨格筋系譜幹・前駆細胞の筋再生能を検討した。(1)移植系の確立:重度免疫不全マウスNSGマウスとジストロフィン欠損mdx4Cvマウスの交配により、NSG-mdx4Cvを作出した。成体のNSG-mdx4Cvマウスではジストロフィン陽性のリバータントファイバーが0.8%程度存在していた。移植によるジストロフィン陽性線維の評価に注意が必要であると考えられた。(2)京都大学iPS細胞研究所で樹立されたヒトiPS細胞(201B7, 253G1, 253G4)からEZ-Sphere法を用いて骨格筋系譜へ誘導した細胞を、NSG-mdx4Cvの前脛骨筋へ移植した。ジストロフィン抗体による免疫染色を行ったところ、コントロール筋に比較して有意なジストロフィン陽性筋線維の増加が認められた。ヒト・ラミンA/C抗体とヒト・スペクトリン抗体の二重染色でもヒトiPS細胞由来の筋線維の形成が確認された。移植した筋にはヒト細胞由来の未分化な細胞集団も集簇して生着していた。(3)今後の課題:今回の移植実験では治療の目安である10%のジストロフィン陽性率は達成できなかった。筋変性・壊死を抑制し、筋収縮力を維持・改善するには (i)移植する細胞数を増やす、ii)幹細胞の性質を持つ細胞を濃縮して移植する、あるいは(iii)移植法を改善することが必要と思われた。腫瘍形成のリスクが無い安全な細胞移植のためには、特異抗体とFACSを用いて未分化細胞を除去する必要があると考えられた。
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