研究課題/領域番号 |
24590712
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研究機関 | 藤田保健衛生大学 |
研究代表者 |
石井 潤一 藤田保健衛生大学, 医学部, 教授 (70222940)
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キーワード | 高感度トロポニン / 心筋障害 / 生活習慣病 / 糖尿病 / 慢性腎臓病 / 高血圧 |
研究概要 |
生活習慣病患者は心血管疾患を高率に発症するため、心血管リスクを正確に評価して、リスクに応じた診療戦略を確立することが重要である。近年、高感度トロポニンにより診断された潜在性心筋障害は、一般住民における心血管イベント発生のリスクと密接に関係することが報告されている。 本年度の目的は高血圧、糖尿病や慢性腎臓病などの生活習慣病患者における潜在性心筋障害の頻度と、その臨床的意義を横断的研究により解明することである。さらに、通常の外来診療を継続しながら心血管イベント発生に関する3年間の前向き観察研究を継続していく。 登録された生活習慣病患者1100例で、潜在性心筋障害の診断のために高感度トロポニンI濃度と高感度トロポニンT濃度を測定した。その内の448例では、左室負荷の指標であるB型ナトリウム利尿ペプチド濃度とN末端プロB型ナトリウム利尿ペプチド濃度、炎症の指標である高感度C反応性蛋白濃度、糸球体濾過値の指標であるシスタチンC濃度、糸球体障害の指標であるアルブミン排泄量、尿細管障害の指標であるL型脂肪酸結合蛋白濃度と白血球ゼラチナーゼ関連リポカリン濃度を測定した。 高感度トロポニンIおよび高感度トロポニンTにより診断された潜在性心筋障害はそれぞれ12%、28%であった。潜在性心筋障害は冠危険因子数、心血管疾患の既往、B型ナトリウム利尿ペプチド、N末端プロB型ナトリウム利尿ペプチド、糸球体濾過値、アルブミン排泄量、L型脂肪酸結合蛋や白血球ゼラチナーゼ関連リポカリンと相関関係を示した。心血管イベント数の多かった慢性腎臓病患者におけるサブ解析では、潜在性心筋障害は予後と有意な関係を認めた。本年度の研究成績から、潜在性心筋障害は外来通院中の生活習慣病患者の約10~30%に存在し、心血管合併症や腎合併症の進展や増悪に関与していると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
外来通院中の生活習慣病患者1100例を本研究に登録できた。登録症例は電子カルテから年齢、性別、冠危険因子、心血管合併症などの患者背景や臨床検査パラメータをデータベースに入力し、通常の外来診療を継続しながら、心血管イベント発生に関する前向き観察研究を継続している。 本年度の横断的研究の成績では、潜在性心筋障害は生活習慣病患者の10~30%に存在し、心血管リスクや腎リスクと有意な関係があることを実証できた。さらに、潜在性心筋障害は新しい尿細管障害の指標であるL型脂肪酸結合蛋白濃度や白血球ゼラチナーゼ関連リポカリン濃度と相関することを明らかにできた。慢性腎臓病におけるサブ解析の結果から1編の英文論文を作成できた。
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今後の研究の推進方策 |
通常の外来診療を継続しながら心血管イベント発生に関する3年間の前向き観察研究を継続していく。一次評価項目は心血管イベント(心血管死、急性冠症候群、心不全もしくは脳卒中による入院)、二次評価項目は総死亡である。多変量解析により、予後と潜在性心筋障害との関係を明らかにする予定である。登録症例でトロポニン以外のバイオマーカーを測定し、複数のバイマーカーが独立した予後の規定因子である場合には、これらを組み合わせたマルチマーカーアプローチの構築を試みる予定である。 可能な限り多くの症例で高感度トロポニンI、高感度トロポニンT、B型ナトリウム利尿ペプチド、N末端プロB型ナトリウム利尿ペプチド、高感度C反応性蛋白、シスタチンC、白血球ゼラチナーゼ関連リポカリン、ガレクチン3などの血中濃度、尿中アルブミン排泄量、尿中L型脂肪酸結合蛋白濃度、尿中白血球ゼラチナーゼ関連リポカリン濃度などを経時的に測定し、これらのバイオマーカーの推移と潜在性心筋障害や予後との関係を検討する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
潜在性心筋障害の頻度を評価するため、平成24年度と平成25年度に全登録症例(n=1100)において高感度トロポニンI濃度および高感度トロポニンT濃度を測定した。一方、トロポニン以外のバイオマーカーの測定は全登録症例の約40%であった。また、バイオマーカーの経時的推移を評価する研究は平成26年度より開始する予定である。そのため、研究はおおむね順調に進展しているが、次年度使用額が生じた。 登録時検体における高感度トロポニン以外のバイオマーカー測定に使用する予定である。また、バイオマーカーの経時的推移を検討する研究を平成26年度よりは開始するため、高感度トロポニンを含めたバイオマーカー測定に使用する予定である。さらに、研究成果を学会において公表するため、その旅費に研究費を使用する予定である。
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