研究課題
基盤研究(C)
Protein kinase R (PKR)はC型肝炎ウイルス (HCV)を含むRNAウイルスが増殖する際に生じる二本鎖RNAによって活性化する。申請者は過去の検討でPKRが、HCV関連の肝細胞癌において非癌部の肝組織に比べて強発現することを同定した。しかしPKRの肝細胞癌における役割については不明であり、その生理的意義について明らかにすることを研究の目的とする。平成24年度、まず肝細胞癌株であるHuh7.5.1細胞を用いて、HCV genotype 2型の全遺伝子を複製する肝細胞癌株JFH1と、HCV genotype 1型の全遺伝子を複製する肝細胞癌株H77sを作成した。また作成したPKR siRNAと、PKRの全遺伝子をコードしたプラスミド (pPKR)を用いて、C型肝細胞癌株にトランスフェクションしてPKRの発現をノックダウン、あるいは過剰発現させ、修飾される細胞内遺伝子をPCRアレイで網羅的に検討した。その結果、PKRの増減により、MAP kinase関連遺伝子、とくにc-Fos、c-Junに変化がみられた。これらの遺伝子変化はHCV複製により増強した。JFH1およびH77sにおいてPKRノックダウンに伴うc-Fos,c-Junの発現低下、およびPKR過剰発現による発現増加をリアルタイムPCRにより確認した。またリン酸化c-Fos、c-JunもPKRノックダウンで低下、過剰発現で増加することをウエスタンブロット法で確認、さらに各々の上流にあるErk1/2、JNK1のリン酸化蛋白も同様に変化していた。これらの結果より、C型肝炎に関連する肝細胞癌において強発現するPKRはMAP kinase関連遺伝子に作用して、癌進展など病態に関わっている可能性が示唆された。
2: おおむね順調に進展している
平成24年度に計画していたHCV複製細胞の樹立、PKR発現量を調整しうる実験系を確立し、PKRの発現に関わる候補蛋白を同定できた。
PKRによるMAP kinase signaling pathwayへの影響について、c-Fos, c-Junに注目しながらどの部分に直接的な作用を持つのかさらに詳細を検討していく。また、その表現形として、細胞増殖や細胞周期、アポトーシスとの関連など、肝細胞癌においてどのような影響を及ぼしているのか、解析していく。さらに、その発現調節メカニズムについて、エピジェネティックな影響についても解析していく。
本年の繰越金11340円については、予定していた実験器具の納入が3月末までに間に合わず、その時間差により生じた。次年度の予算と合わせて、試薬の購入、エピジェネティック解析に使用する。エピジェネティック解析については、その網羅的解析および実験系の立ち上げのため、相応の支出を想定している。また、平成25年度には第一報の論文作成および、国内及び海外での学会発表を予定しており、その英文校正、旅費、学会参加費も計上する。
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