研究課題/領域番号 |
24591015
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
坂井 寛 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 共同研究員 (80611665)
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研究分担者 |
白羽根 健吾 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 共同研究員 (10529803)
冨永 洋平 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 共同研究員 (90304823)
森山 大樹 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 共同研究員 (70586859)
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キーワード | 膵癌 / ナノカプセル / MRI / 早期診断 |
研究概要 |
膵癌の診断においては腫瘍マーカーやCT検査などが用いられているが、それらの検査により診断がなされた時点では、既に根治的切除困難な状態であることがほとんどである。本研究では我々は膵癌の早期診断の新たな手法として、新規MRI造影剤内包多機能ナノカプセルを作成し、これを用いたイメージング技術によって膵癌の早期診断を可能にする新たな診断法を開発することを目的としている。 早期診断のためには、膵癌もしくは膵癌の前癌病変に特異的な分子標的マーカーを同定し、それに対してナノカプセルに親和性を持たせる必要がある。本年も昨年度に引き続き、膵癌特異的なマーカー同定のため、様々な細胞表面抗原に対して解析を行った。 膵癌高転移株におけるマイクロアレイによる遺伝子発現解析で肝高転移株において高発現であった表面抗原CD74の膵癌における発現について解析を行った。フローサイトメトリーで膵癌細胞株におけるCD74の発現を検討したところ、その発現の割合は膵癌細胞株間でばらつきがあることが分かった。また、低酸素環境下での膵癌細胞株におけるCD74の発現に関しても検討を行ったところ、低酸素がCD74の発現に与える影響はほとんど認められなかった。過去の報告では、CD74の細胞表面への発現がダイナミックなものであるとの報告もあるため、今後はその発現メカニズムを解明することでタイムリーに表面抗原を捕捉することが可能であるかについて検討を加えていく予定である。また、膵癌切除組織を用いたCD74の免疫組織化学染色では多くの膵癌でCD74の発現が陽性であることが確認でき、膵癌のマーカーとして有望なタンパクであることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
正常膵管上皮、膵癌前癌病変、膵癌細胞についてナノカプセルの標的となりうる細胞表面抗原をマイクロアレイ等で探索しているが、未だ有望な分子を同定できていない状態である。また、これらの組織についてのレーザーマイクロダイセクションについても、十分な症例数に達しておらず十分な結果が得られていない。
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今後の研究の推進方策 |
今後、症例の蓄積を行い正常組織、前癌病変、癌について十分に検討を行っていく。癌特異的表面抗原の同定を行いえた場合には、セルソーターを用いて細胞分離を行いそれぞれの表面抗原発現による機能的相違の検討を早急に行う。 また、膵癌、前駆病変特異的な抗原を標的とした、ナノカプセルによる指向性の獲得が難しい場合、膵癌・前駆病変周囲の間質に検索範囲を広げる。 ナノカプセルの使用が困難な場合、新たにウイルスベクターによる導入法についても十分に検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
ナノカプセルの標的となりうる細胞表面抗原をマイクロアレイ等で探索しているが、未だ有望な分子を同定できておらず当初の計画より遅れているため。 本研究の遂行に必要な主要装置(フローサイトメーター、in vivo蛍光イメージャー、リアルタイムPCR, 蛍光顕微鏡、遺伝子導入装置、バイオアナライザー、ナノドロップなど)は既に研究室内に設置されている。この他の機器(共焦点レーザー顕微鏡、透過型電子顕微鏡、DNAシークエンサーなど)については学内の研究支援センターにおいて利用可能であり、現在の研究遂行に支障はない。また固形癌に適した高額なセルソーターが必要となる場合もあるがすでに学内の研究支援センターにおいて2台使用できる環境にあり特に新規に購入する必要はない。このため研究経費において新たな設備備品の購入は不要である。消耗品においては qRT-PCRを行うための試薬やプライマーの購入、ソート用モノクローナル抗体, ソート時の使用試薬、Nucleofector用導入試薬、shRNA/レトロウイルス作成キット、マウス等 を実験遂行において購入を予定している。
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