研究課題
膵癌の診断においては腫瘍マーカーやCT検査などが用いられているが、それらの検査により診断がなされた時点では、既に根治的切除困難な状態であることがほとんどである。本研究では我々は膵癌の早期診断の新たな手法として、新規MRI造影剤内包多機能ナノカプセルを作成し、これを用いたイメージング技術によって膵癌の早期診断を可能にする新たな診断法を開発することを目的としている。早期診断のためには、膵癌もしくは膵癌の前癌病変に特異的な分子標的マーカーを同定し、それに対してナノカプセルに親和性を持たせる必要がある。本年も昨年度に引き続き、膵癌特異的なマーカー同定のため、様々な細胞表面抗原に対して解析を行い、大腸癌で転移癌幹細胞(metastasis initiating cell)のマーカーとして報告があるCD110に注目して検討を行った。CD110の免疫組織化学染色を行い、CD110は半数以上の膵癌で発現を認めた。正常膵管には発現しておらず、膵癌に特異性が高かった。また、CD110の機能に関しても検討し、CD110ノックダウンした膵癌細胞株では遊走能・浸潤能が低下することを明らかにした。CD110はトロンボポエチンの受容体としても知られ、CD110ノックダウン群ではトロンボポエチン投与に対する増殖能が対象群に比べて低下した。また、CD166についもて検討し、DC166は正常膵管よりも膵癌で優位に発現が高いことを見出した。さらに、CD166陽性細胞は、CD166陰性細胞に比べて腫瘍形成能が高いことを明らかにした。以上のことから、CD110やCD166は、膵癌診断のための分子マーカーとなりうること、さらに治療標的としても有用であることが示唆された。
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