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2013 年度 実施状況報告書

腎糸球体足細胞における恒常性維持機構の解明と糖尿病性腎症治療戦略への応用

研究課題

研究課題/領域番号 24591189
研究機関東京大学

研究代表者

和田 健彦  東京大学, 医学部附属病院, 講師 (90447409)

研究分担者 大瀬 貴元  東京大学, 医学部附属病院, 臨床登録医 (10568447)
稲城 玲子  東京大学, 医学部附属病院, 准教授 (50232509)
南学 正臣  東京大学, 医学部附属病院, 教授 (90311620)
田中 哲洋  東京大学, 医学部附属病院, 助教 (90508079)
キーワード糸球体足細胞 / 小胞体ストレス / 細胞骨格 / オートファジー / 蛋白尿
研究概要

平成25年度は糸球体足細胞におけるエネルギー関連因子と足細胞恒常性維持機構の相互作用の解析を行った。当研究室で確立した糸球体足細胞特異的SIRT1欠失(SIRT1pod-/-)マウスに対して、マウスにおける足細胞傷害モデルの1つである抗糸球体基底膜抗体モデルを誘導したところ、野生型マウスに同様の疾患モデルを惹起したものと比較して蛋白尿・腎機能・糸球体組織傷害ともにSIRT1pod-/-マウスで増悪が認められた。この欠失マウスでは足細胞特異的なマーカー分子の発現量が低下しており、電子顕微鏡所見でも足細胞傷害が増強していた。SIRT-1欠失が足細胞傷害に及ぼす影響を検討する目的で、研究代表者が分離・確立した温度感受性不死化マウス培養足細胞を用いて検討を行った。抗糸球体基底膜抗体モデルで足細胞に著明な酸化ストレスが認められることを背景として、この培養細胞系においても過酸化水素による酸化ストレス刺激を行ったところ、足細胞の細胞骨格の傷害が惹起された。SIRT1阻害剤を用いてSIRT1活性を低下させた細胞ではこの変化がより顕著となった。この変化には、actin関連蛋白であるcortactinの脱アセチル化による細胞内局在の変化が関与していると考えられた。現在、以上の成果について論文投稿中である。
一方、代謝性ストレスに対する足細胞応答と糸球体足細胞におけるオートファジーに起因する細胞応答の変化については上記検討を優先させたため、まだ十分な成果が得られていない。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

現在まで、糖尿病関連の各種代謝性ストレスについての検討は相当部分まで進んでおり、詳細な実験条件の確立とそれに対する細胞応答の変化を確認することが出来ている。細胞死や細胞骨格の変化について、これらの現象をもたらす分子生物学的機序の解明を試みているところである。一方、足細胞に対する代謝性ストレスに対してオートファジーが保護的に作用しているという仮説を立てて検討を行っているが、上記記載のとおり、現時点では予定よりもやや遅延している。一方で、エネルギー関連分子SIRT1の検討については、当初は最終年度の課題であったが、遺伝子改変マウスが当研究室で確立したことから優先して検討を進め、上記の通りSIRT1の足細胞特異的な細胞保護的効果とその機序を見出して複数の学会・研究会で発表を行い、論文も投稿中である。

今後の研究の推進方策

エネルギー代謝調節関連分子であるSIRT1が足細胞の細胞骨格維持に関与しているという知見を得たため、次年度はこれを発展させて、SIRT1の脱アセチル化作用と足細胞恒常性維持について、主としてcortactinやactin細胞骨格の制御という観点からより詳細な検討を行う予定である。また、現時点では足細胞傷害モデルとして抗糸球体基底膜抗体腎炎についての検討結果が得られているが、今後はprotamine sulfate腎炎やアドリアマイシン腎炎など、他の足細胞傷害モデルについても解析を行い、足細胞傷害に普遍的な機序であるかどうか検討を加える予定である。
また、様々な代謝性ストレスに対する糸球体足細胞の細胞応答の一部が明らかになってきたことから、これの全貌を解明する目的で、培養細胞を用いた細胞生物学的検討を継続する。当研究室では遊離脂肪酸による小胞体ストレス応答と細胞傷害について検討が行われており、この系を利用して足細胞傷害についても検討を加える予定である。また細胞死・細胞骨格の変化には足細胞がいわゆる脱分化を起こしていることを示唆する所見であり、細胞周期制御の変化が関連している可能性があるため、これについても予定通り検討を行う。当初予定していながら進行が遅れている糖尿病性腎症モデルにおける足細胞恒常性維持機構についての検討や、オートファジーに起因する機序の解明についても再度検討を加える予定である。これらの検討から得られた知見を総合して、様々な代謝性ストレスとそれに対する足細胞恒常性維持機構について明らかにし、足細胞傷害に対する治療介入の可能性について分子基盤を構築することを最終年度の目標としたい。

  • 研究成果

    (21件)

すべて 2014 2013 その他

すべて 雑誌論文 (10件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (8件) (うち招待講演 2件) 図書 (2件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Glyoxalase I reduces glycative and oxidative stress and prevents age-related endothelial dysfunction through modulation of endothelial nitric oxide synthase phosphorylation2014

    • 著者名/発表者名
      Jo-Watanabe A, Ohse T, Nishimatsu H, Takahashi M, Ikeda Y, Wada T, Shirakawa J, Nagai R, Miyata T, Nagano T, Hirata Y, Inagi R, Nangaku M.
    • 雑誌名

      Aging Cell

      巻: 13 ページ: 519-28

    • DOI

      10.1111/acel.12204

    • 査読あり
  • [雑誌論文] A multicenter cross-sectional study of circulating soluble urokinase receptor in Japanese patients with glomerular disease2014

    • 著者名/発表者名
      Wada T, Nangaku M, Maruyama S, Imai E, Shoji K, Kato S, Endo T, Muso E, Kamata K, Yokoyama H, Fujimoto K, Obata Y, Nishino T, Kato H, Uchida S, Sasatomi Y, Saito T, Matsuo S.
    • 雑誌名

      Kidney Int

      巻: 85 ページ: 641-8

    • DOI

      10.1038/ki.2013.544

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 利尿薬の基本 種類と作用機序、量の調整、電解質バランスの維持2014

    • 著者名/発表者名
      和田健彦
    • 雑誌名

      レジデントノート

      巻: 15 ページ: 2898-904

  • [雑誌論文] 補体異常とMPGN、DDD、C3GN2014

    • 著者名/発表者名
      和田健彦
    • 雑誌名

      腎と透析

      巻: 76 ページ: 13-7

  • [雑誌論文] Sperm-associated antigen 4, a novel hypoxia-inducible factor 1 target, regulates cytokinesis, and its expression correlates with the prognosis of renal cell carcinoma2013

    • 著者名/発表者名
      Shoji K, Murayama T, Mimura I, Wada T, Kume H, Goto A, Ohse T, Tanaka T, Inagi R, van der Hoorn FA, Manabe I, Homma Y, Fukayama M, Sakurai T, Hasegawa T, Aburatani H, Kodama T, Nangaku M
    • 雑誌名

      Am J Pathol

      巻: 182 ページ: 2191-203

    • DOI

      10.1016/j.ajpath.2013.02.024.

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Novel roles of complement in renal diseases and their therapeutic consequences.2013

    • 著者名/発表者名
      Wada T, Nangaku M.
    • 雑誌名

      Kidney Int

      巻: 84 ページ: 441-50

    • DOI

      10.1038/ki.2013.134

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 【検査値を読む2013】 腎機能検査 ペントシジン2013

    • 著者名/発表者名
      和田健彦
    • 雑誌名

      内科

      巻: 111 ページ: 1260

  • [雑誌論文] 膜性腎症と巣状分節性糸球体硬化症2013

    • 著者名/発表者名
      和田健彦
    • 雑誌名

      BIO Clinica

      巻: 28 ページ: 726-31

  • [雑誌論文] TMA 疾患概念と病因分類2013

    • 著者名/発表者名
      平川陽亮、和田健彦、南学正臣
    • 雑誌名

      腎と透析

      巻: 74 ページ: 1045-9

  • [雑誌論文] 近年明らかになったネフローゼ症候群をきたす液性因子2013

    • 著者名/発表者名
      和田健彦
    • 雑誌名

      内科

      巻: 112 ページ: 767-70

  • [学会発表] SIRT1 Maintains Podocyte Homeostasis via Regulation of Actin Fiber Formation2013

    • 著者名/発表者名
      Shuta Motonishi, Reiko Inagi, Takehiko Wada, Takamoto Ohse, Akira Shimizu, Masaomi Nangaku
    • 学会等名
      American Society of Nephrology Annual Meeting
    • 発表場所
      Georgia World Congress Center(米国・アトランタ)
    • 年月日
      20131107-20131110
  • [学会発表] Circulating suPAR in Japanese Patients with Glomerular Diseases: A Multicenter Cross-Sectional Study2013

    • 著者名/発表者名
      Takehiko Wada, Masaomi Nangaku, Shoichi Maruyama, Enyu Imai, Kumi Shoji, Sawako Kato, Tomomi Endo, Eri Muso, Kouju Kamata, Hitoshi Yokoyama, Keiji Fujimoto, Yoko Obata, Tomoya Nishino, Hideki Kato, Shunya Uchida, Yoshie Sasatomi, Takao Saito, Seiichi Matsuo
    • 学会等名
      American Society of Nephrology Annual Meeting
    • 発表場所
      Georgia World Congress Center(米国・アトランタ)
    • 年月日
      20131107-20131110
  • [学会発表] Glyoxalase I Prevents Age-Related Endothelial Dysfunction through Modulation of eNOS Phosphorylation2013

    • 著者名/発表者名
      Airi Jo, Takamoto Ohse, Hiroaki Nishimatsu, Masao Takahashi, Satoshi Unuma, Takehiko Wada, Yoichiro Ikeda, Toshio Miyata, Yasunobu Hirata, Reiko Inagi, Masaomi Nangaku
    • 学会等名
      American Society of Nephrology Annual Meeting
    • 発表場所
      Georgia World Congress Center(米国・アトランタ)
    • 年月日
      20131107-20131110
  • [学会発表] ネフローゼ症候群に関連する新規液性因子に対するアフェレシス療法の展望2013

    • 著者名/発表者名
      和田 健彦
    • 学会等名
      日本アフェレシス学会
    • 発表場所
      軽井沢プリンスホテル(長野)
    • 年月日
      20131102-20131103
    • 招待講演
  • [学会発表] 輸液療法の基本2013

    • 著者名/発表者名
      和田 健彦
    • 学会等名
      日本腎臓学会学術総会
    • 発表場所
      東京国際フォーラム(東京)
    • 年月日
      20130510-20130512
    • 招待講演
  • [学会発表] Glyoxalase Iによる血管内皮の糖化抑制とeNOSの活性制御を介した内皮機能障害の軽減と血管老化の進行抑制2013

    • 著者名/発表者名
      城 愛理, 大瀬 貴元, 稲城 玲子, 鵜沼 智, 池田 洋一郎, 和田 健彦, 宮田 敏男, 高橋 政夫, 西松 寛明, 平田 恭信, 南学 正臣
    • 学会等名
      日本臨床分子医学会学術総会
    • 発表場所
      東京国際フォーラム(東京)
    • 年月日
      20130413-20130414
  • [学会発表] 新規HIF-1ターゲット分子SPAG4は細胞質分裂を調節し、腎細胞癌の進行に重要な役割を果たす2013

    • 著者名/発表者名
      正路 久美, 村山 尚, 三村 維真理, 和田 健彦, 久米 春喜, 後藤 明輝, 大瀬 貴元, 田中 哲洋, 稲城 玲子, 油谷 浩幸, 児玉 龍彦, 南学 正臣
    • 学会等名
      日本臨床分子医学会学術総会
    • 発表場所
      東京国際フォーラム(東京)
    • 年月日
      20130413-20130414
  • [学会発表] SIRT1 はアクチン線維形成の制御を介して糸球体足細胞の恒常性を維持する

    • 著者名/発表者名
      本西 秀太、南学 正臣、和田 健彦、石本 遊、清水 章、稲城 玲子
    • 学会等名
      第4回腎不全研究会
    • 発表場所
      全社協・灘尾ホール(東京)
  • [図書] CKDブックー慢性腎臓病管理の手引ー2013

    • 著者名/発表者名
      南学正臣、和田健彦、花房規男(翻訳)他
    • 総ページ数
      640
    • 出版者
      メディカル・サイエンス・インターナショナル
  • [図書] 他科専門医にきく 糖尿病腎症患者のための22の質問2013

    • 著者名/発表者名
      大西由希子、和田健彦
    • 総ページ数
      120
    • 出版者
      SCICUS
  • [備考] 東京大学医学部附属病院腎臓・内分泌内科:腎分子病態研究グループ

    • URL

      http://www.todai-jinnai.com/kenkyu/g_nephrology/g01_nephrology

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公開日: 2015-05-28  

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