研究課題
本研究課題では糸球体足細胞におけるエネルギー代謝・恒常性維持機構を解明し、それを利用した糸球体硬化抑制法の開発を目指し、研究を開始した。まず初めに、糖尿病関連の代謝性ストレスに対する足細胞の応答について検討を行った。酸化ストレス負荷・高グルコース負荷・低酸素負荷を行ったが、酸化ストレス負荷により小胞体ストレス応答と細胞骨格の変化が観察された。低酸素負荷については、強度の刺激に反応して小胞体ストレス応答関連分子であるCHOPの誘導が認められ、その後の細胞死に至る経路に影響を与えることが示唆された。また、これに並行してエネルギー関連分子であるSIRT1の足細胞における役割を早めて検討を行った。SIRT1欠失マウスを作製し、これに抗基底膜抗体を用いて腎炎を惹起したところ、アルブミン尿・BUN・糸球体障害がいずれも野生株マウスに比べて高度であった。Nephrin, synaptopodin, WT-1のような足細胞優位発現蛋白はSIRT1欠失マウスに腎炎を惹起した場合には発現の低下度が強く、電子顕微鏡で足細胞障害の増強が観察された。培養細胞系での検討において、酸化ストレス下のアクチン細胞骨格障害はSIRT1活性を低下させた足細胞でより強く観察された。このメカニズムを明らかにする過程で、我々はSIRT1によって脱アセチル化を受ける基質の一つであるcortactinに注目した。siRNAによるノックダウン実験やSIRT1活性化薬・阻害薬を用いた実験により、SIRT1の活性化により脱アセチル化したcortactinは核内から核外へと細胞内局在が変化することが観察され、SIRT1によるcortactinの翻訳後修飾がアクチン細胞骨格の維持に寄与するものと考えられた。このように、エネルギー代謝関連分子であるSIRT1の翻訳後修飾機能による足細胞恒常性維持機構を明らかにすることができた。
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Journal of American Society of Nephrology
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