研究課題/領域番号 |
24591194
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研究機関 | 浜松医科大学 |
研究代表者 |
安田 日出夫 浜松医科大学, 医学部附属病院, 講師 (60432209)
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研究分担者 |
辻 孝之 浜松医科大学, 医学部附属病院, 助教 (30464126)
加藤 明彦 浜松医科大学, 医学部附属病院, 准教授 (60324357)
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キーワード | 急性腎障害 / 敗血症 / ミトコンドリアDNA / TLR9 |
研究概要 |
本研究の目的は、ミトコンドリアDNAがダメージ関連分子パターン(DAMPs)として敗血症による急性腎傷害(acute kidney injury : AKI)に関連するかと検討することである。 これまでに、Cecal Ligation and Puncture(CLP)によるマウス敗血症モデルでAKIを発症することを確認して、ミトコンドリアDNAがCLP作成2時間後よりコントロールより有意に血漿中に全身循環することを突き止めた。 ミトコンドリアDNAはToll-like receptor (TLR) 9を受容体として自然免疫を惹起して、敗血症に併発するAKIの病態に関連するという仮説を検証するために、H25年度では以下の実験を行なった。 1)計画当初はToll-like receptor 9 (TLR9)阻害薬を投与することを想定していたが、TLR9 knockout (TLR9KO) miceとwild typeとでCLPでの腎傷害の検討を行った。 TLR9KOはwild typeと比べてCLP 2h後の腎内Neutrophil Gelatinase-Associated Lipocalin(NGAL)の発現は弱く、24h後の血清クレアチニン値は低値であった。(sCr 0.38 vs 0.17 mg/dl, P<0.01) 以上より、TLR9KOではCLPによるAKIは軽減することを確認した。 2)ミトコンドリアDNAを含むミトコンドリアDebrisをマウスに注入し、腎傷害が認められるかを検討した。マウス肝臓から抽出したミトコンドリアDebrisを静脈注射後、コントロールと比較して腎内NGALが増加したことを確認した。さらにTLR9KOではそのNGALの発現は軽減した。以上より、ミトコンドリアDNAはTLR9を介して腎傷害を惹起することが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1)マウス敗血症モデルでミトコンドリアDNAの全身循環が増加していること、2)TLR9KOでマウス敗血症性AKIが軽減すること、3)ミトコンドリアDebrisを投与し腎傷害が惹起されること、さらにTLR9KOでその腎傷害が軽減することを明らかにすることができた。 以上より実験仮説を検証するための基礎実験は概ね進んでいると思われる。 ヒトにおける敗血症性急性腎傷害での血漿サンプルは少しずつであるが収集できている。 また、当初実験計画では好中球での培養細胞での検討を考慮していたが、マウスモデルでの検討が進んでいるため必要に応じて行なうことを考えている。
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今後の研究の推進方策 |
1)血漿ミトコンドリアDNAの由来はどこからか検証するために、腹水中のミトコンドリアDNAの動態を評価する。 2)ミトコンドリアDNA-TLR9から生じる自然免疫、炎症反応と腎障害との関連、相関性を評価するため、敗血症およびミトコンドリア投与モデルにおいて血漿中のサイトカイン、ケモカインを測定する。 3)ヒトにおける敗血症でのミトコンドリアDNAとAKI、生命予後との関連を検証する。
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