研究課題/領域番号 |
24591196
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
高畠 義嗣 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (30403075)
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研究分担者 |
猪阪 善隆 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (00379166)
北村 温美 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 研究生 (60570356)
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キーワード | オートファジー / 老化 / ミトコンドリア / アシドーシス / ミトファジー / アンモニア |
研究概要 |
腎臓の老化に対抗する生理的な防御機構としてのオートファジーの役割を明らかにした。腎臓の老化の原因は多因子的で決定的なものは存在しない。研究代表者らはオートファジーに注目し、オートファジーが細胞内品質管理の役割を果たすことにより老化防止に寄与しているという仮説を検証した。GFP-LC3マウスおよび腎尿細管細胞特異的オートファジー不全マウスを2年以上観察することにより、以下の諸点が明らかとなった。(1)腎の基底レベルのオートファジーは経年的に亢進するが、代謝ストレス刺激によるオートファジーの増分は鈍化する、(2)オートファジー不全マウスでは腎機能の悪化、尿タンパクの増加、酸化ストレスの亢進・タンパク凝集塊の蓄積、ミトコンドリアの形態・機能異常を伴って腎臓の老化が進行する。以上から前述の仮説がほぼ検証されたものと考えられた。 研究代表者らは腎不全の代表的な合併症であるアシドーシス時に近位尿細管細胞においてオートファジーが亢進することを見出したことを契機に、オートファジーが傷害ミトコンドリアを取り除くことで、酸塩基平衡に対する代償反応を支持するという仮説を立てた。オートファジー不全マウスとそれから単離した細胞培養系を用いた実験の結果、オートファジー不全マウス(細胞)では(1)酸負荷に対する代償反応であるアンモニアの産生が低下し、アシドーシスに対する代償不全が生じる、(2)アンモニア産生の場であるミトコンドリアの機能不全と形態異常を認める、ことが判明した。さらに酸負荷下ではユビキチン化された傷害ミトコンドリアがオートファジーにより処理されることが判明した。これらの結果から、腎近位尿細管細胞においてオートファジーは、酸負荷により傷害されたミトコンドリアを分解することで、ミトコンドリア機能の恒常性維持に貢献しており、これが酸塩基平衡に対する代償反応を維持するうえで重要な役割を有することが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
概要に記したように、2つの仮説を検証できた。すなわちまず腎臓の老化に対抗する生理的な防御機構としてのオートファジーの役割を明らかにすることができた。この実験では腎構成細胞特異的なオートファジー不全マウスを2年以上の長期的に粘り強く観察、解析することが必須であり、やり直しがきかないので当初困難が予想されたが、ほぼ目標を達成できたものと考える。また後者の仮説に関しても定説がなかった酸負荷がもたらす細胞障害の機序を明らかにし、さらにオートファジーがミトコンドリアの品質管理を通じて、酸負荷による細胞障害に対抗する事を証明した。これは慢性腎不全においてアシドーシスの補正が腎機能悪化を緩徐にするという臨床研究の結果を基礎実験から理論的に支持するものである。
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今後の研究の推進方策 |
(1)近位尿細管だけでなく他の腎臓構成細胞についてもオートファジーの役割を究明したい。 (2)またオートファジーを亢進させる薬剤を開発予定である。既存の薬剤のうちオートファジーを亢進させる薬剤を探し出す戦略とオートファジーを抑制させる分子を機能的に阻害する薬剤を新規に作成する二つの方針をたてている。 (3)腎不全の原因の第一位である糖尿病についてオートファジーの役割を究明したい。
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