バクテリアル・トランスロケーション(BT)は腸管内の菌がリンパ行性あるいは血行性に腸管以外の部位に広がる現象であり、免疫不全状態においては敗血症など重症感染の原因となりうる。今回の研究では、BTが起こるメカニズムを解明するとともに、それを抑制する手段について検討を行った。マウスを用いた実験で、抗癌剤による免疫抑制状態を誘導するとBTが高率に起こり、特に緑膿菌など一部の病原菌は他の菌よりもBTを起こしやすい現象が認められた。緑膿菌に抗菌活性を有しないペニシリン系抗菌薬を投与することによって、BTの頻度は上昇し、マウスの生存率にも影響を与えることが示された。
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