研究課題
平成25年度は、MRIと末梢バイオマーカーによる早期診断、スクリーニング法として、北海道大学大学院薬学研究院・神経科学研究室の鈴木利治教授らのご協力を得て、多施設(3施設)で、末梢バイオマーカーとして、APP同様にγ-セクレターゼによりプロゼッシングされる脳神経細胞膜タンパクであるアルカデインのγ-セクレターゼ分解産物で、脳内から血漿中に移行し、ADでは血漿中濃度が上昇していることが判明しているp3-Alc35および従来の髄液バイオマーカーであるAB42、リン酸化タウタンパクと画像所見(MRI)との関連を検討した。MRIは、松田らの開発した画像解析ソフト SPM8 plus DARTEL (VSRAD) による側頭葉内側部の萎縮と、後部帯状回におけるmagnetic resonance spectroscopy(MRS)のchemical shift imagingを解析した。多くのADあるいは軽度認知障害(MCI)患者(2施設の血漿検体)では、血漿中p3-Alc35の濃度が優位に正常コントロールに比較し上昇しており、血漿p3-Alc35がAD末梢バイオマーカーとして有用であることが確認された。MRIでは、VSRADによる側頭葉内側部の萎縮評価と後部帯状回のMRS所見(NAA低下、MI上昇)を組み合わせて検討することで早期AD診断に有用であり、さらにMCIからADへのconversionにも有用であることが示された。したがって、血漿中p3-Alc35の解析とMRI-VSRAD,MRS所見による早期診断、スクリーニングが可能である可能性が示唆された。
2: おおむね順調に進展している
血漿中p3-Alc35および脳MRI、MRSの総合的解析により、当初の目的であった非侵襲的方法によるAD、MCI患者の早期診断と予後予測が可能であることを示し、これらが通常の物忘れ外来における認知症の客観的診断、スクリーニングに有用である可能性が示されたこと。また、これらの成果について専門的国際誌(Jounal of Alzheimer's Disease)に掲載(Omori et al.J Alzheimers Dis. 2014;39(4):861-870)されている。
倫理的同意を得て、さらに対象数を増やして、実際に脳ドック受診患者(正常者、認知症患者を含む)等にもこれらの非侵襲的バイオマーカーが有用であるかどうかを検討する余地がある。さらに、根本的治療がない現在、対症療法として広く認知症治療に使用しているドネペジル等の抗AchIをより早期から使用したケースと、中等度から使用したケースで臨床的に認知症の経過に差が出るかを、上記バイオマーカー等を駆使して検討する。
交付決定額を計画的に使用したが残額が生じた。平成26年度に被験者から採取した脳脊髄液の保管に必要なエッペンドルフチューブを購入するために使用予定である。
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Clin Chim Acta
巻: 430 ページ: 150-155
10.1016/j.cca.2014.01.007.
J Alzheimers Dis.
巻: 39 ページ: 861-870
10.3233/JAD-131610.