研究課題/領域番号 |
24591807
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 独立行政法人国立国際医療研究センター |
研究代表者 |
諸岡 都 独立行政法人国立国際医療研究センター, その他部局等, その他 (90535775)
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研究分担者 |
原 久男 独立行政法人国立国際医療研究センター, その他部局等, その他 (00349911)
瀧 淳一 金沢大学, 大学病院, 講師 (10251927)
諸井 雅男 独立行政法人国立国際医療研究センター, その他部局等, その他 (30256721)
窪田 和雄 独立行政法人国立国際医療研究センター, その他部局等, その他 (40161674)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | methionine / PET / AMI / オートラジオグラフィ / CD68 / マクロファージ |
研究概要 |
心筋梗塞後の早期再還流病巣に、11C-メチオニンおよびヘパリン負荷18F-FDG が高集積を示すことを我々は世界で初めて発表した。この現象の詳細、特に集積の時間経過とほかのトレーサとの関係、予後との関係、所見の適切な評価法、そして両トレーサーの梗塞心筋への集積と組織修復反応とのかかわりを解明するのが本研究の目的である。初年度である平成24年度は、基礎研究においても臨床と同様の結果が得られるかを確認した(金沢大学滝ら:研究成果は論文発表されている)。再還流モデルラット(1,7,14,28日後、3,6ヶ月後)に14C-メチオニンを投与し、オートラジオグラフィーで画像化した。メチオニンの集積の程度をTl, Tc-MIBIと視覚的に評価すると、メチオニンは3日以降にTc-MIBIで血流欠損部の内部に認められ、Tlとの比較ではおおむねTlの集積低下部に一致してメチオニンの集積を認めた。定量的解析では、正常部との集積比を算出したところ、Tlでは正常部に対し集積比は0.35±0.13~0.66±0.10程度であったが、メチオニンの集積は再還流後3日に1.79±0.23と正常部に対し増大していた。その後は徐々に低下していくものの、14日までは正常部に対し1.31±0.12程度と明らかな集積増大といえた。3, 6ヶ月後ではほとんど正常部と同程度の集積となっていた。さらに、心筋組織標本による病理学的検討を行った。マクロファージに対する特異的抗体であるCD68とmyofibroblastのマーカーであるsmooth muscle actinに対するモノクローナル抗体による免疫組織染色にて、その分布とメチオニンの集積分布を比較検討した。3日後では、CD68陽性部はメチオニン集積部とよく一致し、さらに7日目でも両者の分布はよく一致し、メチオニンの集積はマクロファージの浸潤を反映していると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、再還流後の心筋にメチオニンの集積が見られるのではないかという仮説に基づき、臨床ベースでスタートした。臨床的には仮説通りの結果がえられたため、ではその集積の意味は心筋梗塞後におこる血管新生か、それともマクロファージの浸潤かの意味づけを行う必要が出てきた。 そこで、今年度の主たる目標は、金沢大滝らの基礎研究による再還流後の心筋へのメチオニン集積が基礎実験でも実証されるか、また、実証された場合、病理学的にはどのような意味があるのかを検討することであった。すなわち、急性心筋梗塞後再還流モデルマウスでも、臨床と同様にメチオニン増大集積が見られるかどうかを、経過をおって、Tl, 14C-メチオニン、Tc-MIBIを使用して確認しさらに病理学的検討を追加した。この結果によりメチオニンの集積はマクロファージを主として反映したことが確認された。本研究の成果は、心筋梗塞後の炎症のコントロールの評価にメチオニンPETが役立つ可能性があることを示唆している。
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今後の研究の推進方策 |
滝らの基礎研究により、急性心筋梗塞後再還流モデルマウスでも、臨床と同様にメチオニン集積増大が見られたことが確認され、さらに病理学的検討によりマクロファージを主として反映したことが確認された。この基礎研究により、本研究の意味づけが明確となった。すなわち、心筋梗塞後の炎症のコントロールの評価にメチオニンPETが役立つ可能性があることを示唆する。心筋梗塞後の炎症は、抑制するほうがよいと考えられる一方、炎症とは免疫反応なので抑制しすぎるのはよくないとの考えもある。炎症をコントロールし、少しでも心筋梗塞のダメージを減少させるべく、適切な治療のモニタリングにメチオニンPETがなり得る可能性がある。今後は、基礎研究を踏まえ、臨床研究として、再還流後の心筋梗塞患者にもTl, BMIPP, FDG, メチオニンの集積の程度がどの程度であるか、臨床所見と対比させ検討してゆく予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
心筋梗塞発症後24時間以内に再還流に成功した患者にTl-BMIPPシンチ, FDG PET, メチオニンPETを施行する。当院の院内規定に従い、研究患者に対しては、PET使用料が発生する。一人の患者につきPETは一度に2回、そして、フォローアップでも撮像するが、そのたびにPET使用量が発生する。次年度の研究費は主としてこれら検査代に当てられると推測される。
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