研究課題
大動脈瘤に対するステントグラフト治療に特有の合併症として瘤内への血流が残存するエンドリークがあり、造影CTによる術後の経過観察が重要である。しかし、大動脈瘤の患者では腎機能の悪いことがしばしばあり、造影CTが施行できず臨床的に問題となっている。本研究の目的は造影剤を用いず、MRIによりエンドリークを描出する画像診断法を開発することである。初年度である2012年に動的、静的な液体をともに高信号として描出するbalanced turbo field echo sequenceに動的液体のみの信号を抑制するmotion-sensitized driven equilibrium pulseを加えることでエンドリークを描出できる可能性があることをファントム実験によって確かめた。研究成果は2012年11月にシカゴで開催された第99回北米放射線学会と2013年5月に軽井沢で行われた第42回日本IVR学会総会で発表し、2013年に論文をJournal of Magnetic Resonance Imaging誌上に発表した(38巻714頁-721頁)。2012年度後半から2014年度にかけて、胸部または腹部のステントグラフトを施行した症例のうち、非造影MRIと造影CTの両方が施行可能であった46名の患者を対象とする臨床研究を行った。造影CTをreference standardとして、2名の放射線科医による独立した読影実験を行った。造影CTでは10例の患者にエンドリークが認められ、そのうち9例のエンドリークをMRIで2名の放射線科医が正しく診断した。また、3名の患者にアーチファクトによる偽陽性病変を認めた。非造影MRIのエンドリーク検出における感度は91%、特異度は91%、正確度は91%、陽性的中率は77%、陰性的中率は97%であり、おおむね良好な診断能を示した。研究成果は2014年12月にシカゴで開催された第100回北米放射線学会と2015年9月に東京で行われた第43回日本磁気共鳴医学会総会で発表し、論文が2016年に3月にEuropean Radiology誌の電子版に掲載された。最終年度は主に同論文の執筆と投稿を行った。
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European Radiology
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10.1007/s00330-016-4315-5