研究課題/領域番号 |
24592003
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
宇都宮 徹 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 准教授 (30304801)
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研究分担者 |
島田 光生 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 教授 (10216070)
井本 逸勢(橘逸勢) 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 教授 (30258610)
森根 裕二 徳島大学, 大学病院, 助教 (60398021)
居村 暁 徳島大学, 大学病院, 助教 (90380021)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | miRNA / 肝細胞癌 / がん幹細胞 / 幹細胞マーカー / 多中心性発癌 / miRNAマイクロアレイ / epigenetic修飾 / DNAメチル化 |
研究概要 |
〔研究の目的〕非癌部肝組織におけるがん幹細胞関連miRNA発現と肝発癌との関連を明らかにすることで新たな発癌分子機構解明に寄与すると共に肝発癌や残肝再発の早期診断や肝移植適応決定などへの臨床応用を目指す。 〔研究実績の概要〕 1. 肝発癌とmiRNA発現:肝細胞癌(肝癌)の中でも特に非B非C(NBNC)肝癌の非癌部肝組織のmiRNA発現を正常肝組織と比較した。NBNC肝癌は、HBcAb陽性(n=5)とHBcAb陰性(n=13)に細分類しmiRNAマイクロアレイ解析を行った。HBcAb陽性例の非癌部で有意に発現が減弱するものにがん幹細胞マーカー(ABCG2)の発現を抑制するmiR-328が含まれていた。一方、HBcAb陰性例の非癌部で有意に発現が減弱するものには、miR-328に加えてABCC1発現を抑制するmiR-326やCD44やCD133等のがん幹細胞マーカー発現を抑制するlet-7が含まれていた。 2. がん幹細胞関連miRNAとターゲット遺伝子のvalidation:上記1.にて同定したがん幹細胞関連miRNAの候補のうち、これまでにmiR-328とlet-7dについて、そのmiRNA発現とターゲット遺伝子の発現をRT-PCR法にて解析しその関連を調べた。miR-328とABCG2発現では相関係数-0.124、let-7dとCD44発現では相関係数-0.190であり有意な逆相関を認めなかった。 3. 肝発癌とepigenetic修飾:上記2.のごとく、がん幹細胞関連miRNAとターゲット遺伝子の明らかな関連を確認できず、肝発癌に関与する遺伝子発現変化にはmiRNA以外の制御機構も考慮する必要がある。そこでDNAメチル化に着目した研究を開始した。ここでもNBNC肝癌例の非癌部肝組織を対象としDNA Methylation Microarrayを用いて解析を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(理由)肝細胞癌(肝癌)切除例の非癌部肝組織を用いたmiRNAマイクロアレイ解析の結果、特にNBNC肝癌例において有意な発現変化を示すmiRNAを同定できた。その中には多くのがん幹細胞関連miRNAが含まれることを確認した。特に、HBcAb陰性例の非癌部肝組織と正常肝組織の比較にて同定されたmiR-328, miR-326, let-7 family:7個、miR-451/144 family:3個、miR-16などは有力な候補miRNAと考えられた。 これらのmiRNAマイクロアレイ解析の結果を検証すべく、それぞれのmiRNA発現とそのターゲット遺伝子の発現をRT-PCR法にて解析しmiRNA発現とターゲット遺伝子発現の相関について検討した。これまで得られた結果では理論上期待される逆相関関係は認めたものの、相関係数は低く(R= -0.124, R= -190)、統計学的に有意な逆相関は確認できていない。現在他の組み合わせについても検証中である。早い時期に有望なmiRNAの同定とvalidationが可能となれば、機能解析などを行う予定であるが、現在までに有望なmiRNAの絞り込みはできていない。
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今後の研究の推進方策 |
肝細胞癌(肝癌)の発癌分子メカニズムに関して、これまでmiRNA発現プロファイルに特徴的な傾向を認めること、特にがん幹細胞関連miRNAが遺伝子発現制御に関与していることを明らかにした。しかしながら現在のところターゲット遺伝子との有意な逆相関を示す候補miRNAの絞り込みができておらず、まずはこの有力な候補となる肝発癌関連miRNAの絞り込みを今後も継続的に行う。さらに、実際に多中心性再発を来した肝癌切除例の非癌部と無再発症例の非癌部のmiRNA発現プロファイルの違いにも注目し、候補miRNAの絞り込みを加速させる。 一方、遺伝子発現はmiRNAのみならずepigenetic修飾によっても制御されていることより、今後はDNAメチル化による制御に関するゲノムワイドな解析をDNA Methylation Microarray (Infinium 450K BeadChip, Ilumina)を用いて行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
肝発癌分子機構の中でも非癌部肝組織における遺伝子発現異常に関与する重要な候補miRNAの絞り込みのためのRT-PCR法に研究費を使用する。ここでは、それそれの肝組織よりRNAを抽出しmiRNA発現レベルとターゲット遺伝子発現レベルをともにquantitative RT-PCR法にて解析する。internal controlとしては、それぞれRNU6BとGAPDHを用いる。有力な候補となるターゲット遺伝子については蛋白レベルでもvalidationする予定であり、免疫染色とwestern blottingに研究費を使用する。 一方、遺伝子発現はmiRNAのみならずepigenetic修飾によっても制御されていることより、今後はDNAメチル化による制御に関するゲノムワイドな解析をDNA Methylation Microarray (Infinium 450K BeadChip, Ilumina)を用いて平行して進める予定であり本解析にも研究費を使用する。ここでは、それそれの肝組織よりDNAを抽出する。よって、次年度への繰越額は解析に必要な消耗品に使用予定である。
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