研究課題
〔研究の目的〕非癌部肝組織におけるがん幹細胞関連miRNA発現と肝発癌との関連を明らかにすることで新たな発癌分子機構解明に寄与すると共に、肝発癌や残肝再発の早期診断や肝移植適応決定などへの臨床応用を目指す。〔研究実績の概要〕1. 肝発癌とmiRNA発現:近年、増加傾向を示す非B非C(NBNC)肝癌の非癌部肝組織のmiRNA発現を正常肝組織と比較した。特に、HBcAb陰性例の非癌部で有意に発現が減弱するものには、がん幹細胞マーカー(ABCG2)の発現を抑制するmiR-328、CD44やCD133の発現を抑制するlet-7 familyが含まれていることを明らかにした。2. 肝発癌とepigenetic修飾:上記1.にて同定されたがん幹細胞関連miRNAとターゲット遺伝子発現との関連をRT-PCR法にて検証したところ明らかな関連を認めなかったことより、肝発癌に関与する遺伝子発現変化にはmiRNA以外の制御機構が関与している可能性が考えられた。そこでDNAメチル化に着目した研究を開始した。NBNC肝癌例の非癌部肝組織を対象とし正常肝組織との違いをDNA Methylation Microarray (450K BeadChip)を用いて解析した。DNA メチル化異常はHBcAb陽性群 vs. 正常群およびHBcAb陰性群 vs. 正常群で比較検討した。平均β値の差0.2以上かつP<0.05を満たすCpGサイトを抽出したところ、HBcAb陰性群との比較では87サイト、HBcAb陽性群との比較では603 サイト、両比較で共通するCpGサイトは30サイトであった。NBNC肝癌例の非癌部で高メチル化を示す遺伝子の中に、がん抑制作用を示すLrig1が含まれていた。Lrig1は腸管上皮幹細胞に高発現しておりがん幹細胞および発癌機構への関与も報告されている。そこでLrig1遺伝子発現を解析したところDNAメチル化状態との有意な逆相関を認めた。すなわちNBNC肝癌例の非癌部肝組織に特異的なDNAメチル異常が、がん幹細胞関連遺伝子の発現を修飾することで肝発癌に関与する可能性が示された。
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